国際学会参加報告/留学
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開催期間:2024年5月16日~20日
立花 眞仁
5月17日から20日に韓国の釜山のBEXCOで開催されたアジア・オセアニア産婦人科学会(AOFOG)2024に参加してきました。2022年からAOFOGのREI(Reproductive endocrinology & infertility) Committee memberを拝命しているため、今回はREI committee企画として、17日金曜の朝にワークショップ、19日午後にはシンポジウムと2回の発表の機会がありました。海外の学会はディスカッションが盛んなので、毎回普段からの英会話トレーニングの重要性を感じさせられるのですが、相変わらず帰国しても行動には移せていません。Committee memberとは、これまではZoomミーティングやメール審議のみで、対面で合うのは始めてだったのですが、皆フレンドリーでとても良い繋がりができました。AOFOGは、思った以上に日本から参加されている先生も多く、現地では、当学から参加の工藤先生(YGAの1st Prizeを受賞されました。おめでとうございます)、東北医科薬科大学へ栄転された徳永先生、東北の生殖を生業としている先生とも毎晩一緒に韓国グルメを堪能し、またまた体重増加というお土産を持って帰国となりました。写真にあるエビは独島(竹島)エビという韓国では高級なエビのようで、皆で頼んでみました。某教授先生が“竹島エビだろ!”と連呼していて、密かに身の危険を感じていました。
開催期間:2024年5月16日~20日
工藤 敬
2024/5/16~20で釜山で開催されたAOFOG (Asia & Oceania Federation of Obstetrics & Gynaecology) 2024に参加して参りました。
これまで接する機会が乏しかったアジア・オセアニアの産婦人科医療における現状を様々な観点から知ることができ、多くのことを勉強させていただきました。
日本での日常診療で「当たり前」に行っていることが、風習・文化・宗教・技術・予算・人員など様々な点で異なる発展途上国の産婦人科医療においては「当たり前ではない」ことを実感致しました。
また、Young Gynecologist Award(YGA)としてアメリカ留学で研究してきたことを発表する機会をいただきました。私に割り振られた時間は18分。人生最長の口演を英語で行うということであり、辛い準備期間ではありながらも、非常に刺激的で生涯の記憶に残るかけがえのない体験となりました。さらに、発表内容を評価していただき、大変光栄なことにYGAの中でも1st Awardを受賞(賞金は現在のレートで約50万円!!)させていただきました。
今回の学会参加で学んだ多くのことを、今後の実臨床や研究に活かしていけるように努めて参ります。今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒宜しくお願い致します。
開催期間:2024年4月7日~11日
宮原 周子
2024年4月7-11日にサンディエゴで開催された、2024 AACR annual meeting(米国癌学会年次総会)に参加しました。AACRは婦人科癌だけではなく全ての癌腫を対象とした学会で、世界中の癌研究者が集まります。その内容は基礎研究からPhase3の治験までにおよび、癌研究の全てを網羅すると言っても過言ではなく、演題数は6000題をこえるようです。基礎研究が成功し治験が始まるまでは少なくとも10年かかると言われていますが、その繋がりを身をもって体感するような学会で、昨年初めて聴講目的に参加した際には目から鱗が落ちるような感覚でした。今年は大学院での研究内容で、初の国際学会発表にも挑戦しました。
会期中は、メインとなるプレナリーセッションを主に聴講しました。内容そのものもとても興味深いものでしたが、コンサート会場のような派手な演出で登壇者も輝いており、米国らしさ(?)も、感じられました。
さて、自身のポスター発表は、ニッチな内容かつマイナーなセッション内に収められたのでお客さんが来てくれるのか不安でしたが、13時半から17時までの耐久戦の中、多くの方にポスターを見ていただき、質問を受けました。なにせ英語が不得意で、質問の内容が分からないことも多かったのですが、「申し訳ないけど英語が苦手なのでゆっくり話してください、、」とお願いすると、みなさん快く噛み砕いて話していただけましたし、やはり臆さず会話することが再重要だと認識しました。とはいえ、隣の中国の発表者の方をはじめ、学会に来ている他国の方は皆さん英語ペラペラでしたので、語学に勤しみたいと思います。
毎日学会会場に足を運んでいましたが、合間の時間でを用い、サンディエゴの爽やかな気候の中、コンベンションセンターの目の前にある海沿いの道をランニングしたり、ダルビッシュ選手が当番するペドコパーク周辺を散策したほか、最終日にはトップガン再ブームで話題となったミッドウェー博物館(期待をこえる充実の内容!)を見学したりと、滞在を満喫しました。
サンディエゴは海沿いで、メキシコにも近いため、所謂アメリカの肉だけでなく、シーフードやメキシコ料理がおいしいのも特徴で、食事も楽しめました。
このような機会を与えていただきました、東北大学産婦人科に感謝いたします。
これからも臨床・研究に邁進し、是非ともまた国際学会に参加したいと思います。
開催期間:2024年03月12日~16日
濱田 裕貴、高橋 司、清水 孝規、内堀 洪欣、高橋 友貴、邑本 美沙希、森 亘平
2024年3月13日から3月16日にカナダ・バンクーバーで開催されたThe 71st Annual Meeting of the Society for Reproductive Investigation (SRI)に参加いたしましたのでここに報告いたします。以前留学でお世話になっていたStephen G Matthews先生が本学会の学会長でしたので、学会を盛り上げるべく総勢7名で参加いたしました。小生が一番の年長者でしたし、カナダでの留学経験もありましたので、僭越ながら参加した皆様を引率させていただきました。幸いにして全員の演題が採択となり、ポスター発表6題、口頭発表1題での発表でした。国際学会経験者の4名は、立派な発表で質疑応答もさすがでした。国際学会初体験の3名も、初めてながら活発な質疑応答をすることが出来、海外の学会の雰囲気を肌で感じたと思います。学会参加は研究発表だけではなく、世界的に著名な先生方の講演を拝聴する機会も多いのも大きな特徴で、知的好奇心をくすぐられたのは私だけで無いはずです。また、空き時間を利用した市内観光や現地の料理に舌鼓を打つことも、国際学会の醍醐味と言えましょう。今回参加された先生が、公私ともに楽しまれたのでしたら幸いですし、この記事を読んでいただいた方が「国際学会参加って楽しそう」、と感じていただけたのなら本望です。個人的には、コロナ禍でバーチャルなお別れしか出来なかった留学先のラボメンバーに、対面で再開・お別れをすることが出来て、ようやく、一区切りすることが出来ました。学会発表の機会を与えて頂いた産婦人科教室、不在の間の臨床業務をカバー頂いた医局員の皆様、そして学会運営の皆様に、心より感謝いたします。こうした経験を糧に、今後とも研究に邁進し、自分自身も含めたさらなる飛躍を期待いたします。(濱田裕貴)
基礎研究を中心に、最新の知見を学ばせていただき非常に刺激を受けました。私自身は『Obstetric DIC with Fibrinolytic System Abnormalities Significantly Increases Fibrinogen Demand』と題しまして当院への搬送症例をもとにした臨床研究をポスター発表させていただきました。学会そのもの以外にも、バンクーバー市内観光で吊り橋を渡ったり、学会結成バンドのライブで躍り狂ったり、充実した楽しい時間を過ごしました。このような機会を与えてくださった東北大学病院産婦人科と、熱心にご指導くださいました濱田裕貴先生に心より感謝申し上げます。(邑本美沙希)
バンクーバーは、「レインクーバー」と呼ばれるほど、晴れの日が少ないと言われていますが、学会開催期間は、地元民も驚くほどの晴天に恵まれとても過ごしやすい気候でした。学会場は、ワールドセンターという港に面し、湾内を水上飛行機が離発着するというとてもおしゃれな会場でした。Satellite Meetingでは胎盤のSessionを選択し、最先端の研究を聞くことが出来ました。特に、ケント・ソーンバーグ博士の胎盤の形成が胎児の心臓形成に影響を及ぼすという話が印象に残りました。今回は国際学会で初めてのポスター発表を行い、とても刺激になりました。学位の研究を発表し、研究室と関連のある海外のラボの方に沢山訪れていただき、拙い英語ながらデスカッションできたのは良い経験になりました。また、ちょうど自分のポスターの向えにカリフォルニアサンディエゴ大学の堀井先生が発表されていました。もともと私たちと同じ産婦人科医ですが、海外で長年リサーチを中心に行われている先生でした。お話させていただくと、我々世代の東北大学卒業者にとっては思い出深い教授の娘様である李、かつ私の知り合いの姉さんである事がわかりました。驚きとともに世間の狭さを痛感する経験となりました。滞在期間中に、カナダのトロントに御留学の経験のある濱田先生のご案内でバンクーバー周辺を観光することも出来ました。熟成肉のステーキをみんなで楽しむ事ができ、日本ではなかなか味わえない、旅の思い出の味となりました。最後になりましたが、このような機会を与えて下さり、ご指導してくださった齋藤教授、有馬先生、日常の業務をカバーしていただいた腫瘍グループの先生方、何より慣れない海外で手取り足取り教えていただいた濱田先生に御礼を申し上げたいと思います。(清水孝規)
ポスター発表の機会をいただき、学会参加させていただきました。SRIは胎児・胎盤に関するReproductive Healthに関する広い領域をカバーする学会です。マウスモデルを用いた妊娠糖尿病における胎盤通過性のEVs(Extracellular vesicle)の基礎研究から、オランダの飢餓(Dutch famine 1944-1945)に関する妊娠中の胎内環境が長期的にしかも世代を超えて影響を及ぼすという疫学のような範囲までカバーしています。Reproductive Healthを通じて、人間個々人のポテンシャルを100%引き出せるような世界を作っていくという未来へ向けた強いメッセージがあり、前へ前へと進もうとする世界の研究者の方々の講演に感銘を受けました。私自身はsFlt-1/PlGF比という妊娠高血圧腎症のマーカーと胎児心機能に関する研究を発表しました。英語でのプレゼンテーションは初めてであったため、質疑応答に苦しみましたが、多くの方々にプレゼンする機会をいただき、様々な反応をいただけたのは非常に嬉しく思います。このような発表の機会を頂けた東北大学産婦人科医局、齋藤昌利教授及び、ご指導いただいた濱田裕貴先生に心より感謝申し上げます。(森亘平)
今回はバンクーバーで開催されたSRIに出席し、Oral10分間という枠で発表して参りました。同医局に所属している主人のオーストラリア留学時代に、私自身も機会をいただき、実験・研究した内容であり、オーストラリアで出生した子供達も連れて、家族4人で現地に向かい、家族としても大変思い出になりました。臨床に近い演題から、基礎研究ベースの内容まで幅広い内容で大変勉強になりました。プライベートでは引率してくださった濱田先生をはじめ、一緒に参加した医局員たちとカナダのステーキをほおばり楽しい夜を過ごしました(ステーキのサイズは300g~と、やはりあちらは感覚が違います)。今後も学会参加・論文執筆に励むモチベーションの一つになりました。このような機会を与えていただき感謝いたします。(高橋友貴)
SRIに参加するのは今年で2回目になり、1回目は昨年オーストラリアのブリスベンでのポスター発表でした。大学6年生の時に循環器内科の先生方からご指導を頂きAHAでのポスター発表を始め、今回は国際学会4回目の発表になります。
昨年は分娩回数と2型糖尿病との関連について発表致しましたが、今年は分娩回数と慢性腎不全との関連について発表を致しました。腎臓の専門家の先生からも質問・コメントを頂き、たくさんディスカッションができたと思っております。
国際学会の参加では毎回新しい刺激を得て、日本に戻ったらもっともっと頑張ろうと思うようになります。今回の学会がバンクーバーの名所であるカナダプレースで開催されており、カナダの大自然にも恵まれ、とても充実で楽しい時間を過ごせました。
今回も子どもと主人が同行してくれ、子どもは2歳ですが、3回目の国際学会参加?になります。私が発表をしていた間にも主人が一生懸命子どもと遊んでくれました。こんなに協力的な主人と子どもに恵まれ、感謝しております。
学会発表の機会を頂いた齋藤昌利教授およびご指導を頂いた岩間憲之先生並びに医局の皆様に心より感謝申し上げます。(内堀洪欣)
SRIに参加するのは今年で3回目になります。1回目のコロラドでの開催はコロナのためオンラインの参加で、2回目はブリスベンでの現地参加でした。開催地の関係もあると思いますが、今年はより参加者も多く、また東北大学からの参加者も多かったです。何より大学からともに行った清水先生は学生時代の同級生でありSGTの班も一緒で苦楽を共にした仲です。婦人科の清水先生と産科の私、卒業してから同じ職場で働くことはありませんでしたが、こうして何年ぶりに異国の地で盃を交わすのは感慨深いものがありました。私は妻の発表もあり子供たちを連れて行きましたが、彼らはカナダの消防車に夢中。観光など夢のまた夢で時間が空けば消防署か公園に行く日々でした。
肝心の発表ですが、一昨年、去年はオーストラリア留学中の基礎研究の発表をさせていただきましたが、今回は臨床研究の発表をさせていただきました。発表はポスターでしたが、やはり基礎研究がメインの学会でnon MDが多い学会なためか、正直あまり興味を持ってもらえなかったという印象です。実際に質問に来たのはイギリス人の方お一方と採点者の方ぐらいでした。運よく採点者の方が興味を持ってくれたのか、なぜかポスター賞を受賞することができました。相変わらず採点基準がわからないのですが、3年連続で、どうやらこの学会と相性がいいみたいです。客観的に見るといずれも共通してMethodがちゃんとしていて結果がシンプルです。これが研究するうえで一番大事なのかもしれません。表彰式の際は日本みたいに厳かな雰囲気は一切なく、なぜか激しめのロックミュージックがかかります。こればっかりはどうも慣れません。
海外の人たちは研究だけやっていて、そこには追い付けないよね、なんて日本人の会話を耳にします。確かに、研究資金も海外の方が潤沢かもしれません。しかし、もちろん何をやるかにもよりますが、一つのことを基礎からも臨床からも見られるというのは多くの日本人のMD研究者のメリットかもしれません。ピンチをチャンスに、これからも基礎研究と臨床研究の双方からアプローチできればと思っています。(高橋司)
開催期間:2023年9月10日~13日
立花 眞仁
2023年9月にギリシャで行われたIFFSに参加してきました。2025年にIFFSが日本で半世紀ぶりに開催されることもあり、今回は、日本生殖医学会(JSRM)としての宣伝も兼ねたJSRMシンポジウムとして3名のJSRMシンポジストのうちの1名として発表してきました。IFFSでは、各国の生殖医学会や、学会の生殖グループが同様のジョイントシンポジウムを開催しており、前後にはFIGOやアメリカ生殖医学会のシンポジウムが開催されていました。各国の生殖医療の体制や現状、学会単位で行っている臨床試験などの発表があり、日本との違いを感じることができて大変興味深かったです。
今回、帰国後すぐに臨床遺伝専門医試験を控えているという残念な日程にて、本来、学会参加時以外はホテルに籠もり、往復の飛行機の移動中も含めて試験勉強を目論んでいました。しかし、ギリシャは毎日快晴、DRYコンディションで、地中海も美しく、遺跡が町中に点在しており(学会場からも地下鉄や徒歩で行ける場所に神殿が点在)、とても魅力的で誘惑が多い場所でした。結局、学会の空き時間や夜は、他大学の先生との食事会や観光、往復の飛行機でのビールも満喫して帰ってきてしまいました。唯一の心残りは、渡航1週間前に数年に一度という大雨と洪水で、メテオラに行けなかったことです。ただ、パルテノン神殿(写真)をはじめ、ギリシャは本当に見る価値のある場所が数多く、いつかまた訪れたいと思う国でした。その際には、是非メテオラをリベンジしたいと思います。
開催期間:2019年10月11日~12日
張 雪薇
今回、私は2019年10月11-12日にかけて韓国仁川市で開催されたThe 6th Biennial Meeting of Asian Society of Gynecologic Oncology に参加し、“Tyrosine kinase receptor TIE-1 mediates cell growth by regulating PI3K/Akt signaling pathway in PI3K-high-expressing ovarian cancer”というタイトルで口頭発表を行ってきました。
二年に一回の大きな集まりで、著名な方から若手まで多くの研究者が集い、シンポジウム、オーラル共に活発なディスカッションが行われており、連日のセッションはとても内容の濃いものでした。世界中の研究者たちと交流することで、研究内容はもちろん、他国の考え方また、会場の器材、設備等、さまざまな面において日本の学会にはないレベルの高さを痛感した学会でした。
自身の発表については、海外の研究者たちとディスカッションすることで、自身の見聞を広げることができ、今後の研究遂行に役立つ機会となりました。また、Molecular Dissection of Ovarian Clear Cell Carcinoma など、興味深いシンポジウムが数多く行われていたり、自身の研究に関連する内容のポスター発表が行われたりと、自身の研究に活かせる知見を得ただけでなく、幅広い分野における最先端の研究成果を学ぶことができました。さらに、学会に来ていた他国の学生およびポーランド出身のポスドクの方と食事を交えて研究の討論や日常会話を交わすなどの交流をはかり、研究者の輪を広げる活動も行うことができました。
このように今回の世界最先端の国際学会を通じて、世界の婦人科腫瘍学の潮流を肌で感じ、研究面、語学面および文化の違いなど様々な点において学ぶことができ、非常に貴重な体験となりました。この学会で得たものを今後の研究や生活に生かしていきたいと思います。
懇親会の夜には、参加者全員は笑顔で夕食音楽会を開きました。音と光の美しさで会場の空気が一変し、まるで学術講演会ではないような雰囲気に魅力を感じ、大変楽しい時間を過ごすことが出来ました。
最後になりましたが、このような機会を与えて下さり、ご指導してくださった八重樫教授、石橋ますみ先生をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に感謝申し上げます。
開催期間:2019年5月5日~9日
岡本 聡
2019年5月5日から9日までの5日間、20th International Congress of Cytologyに参加させて頂きましたので報告します。
学会は、シドニーのダーリングハーバーにあるインターナショナルコンベンションセンターで行われました。ターリングハーバーはもともと貿易港で造船所や倉庫が多く建ち並んでいたエリアだったようですが、現在はショッピングセンターや動物園、水族館、映画館、カジノ、レストラン、バーなどがあり、日本の横浜のみなとみらいのように海辺で食・買・遊が楽しめる場所です。
学会に参加したのは徳永先生、石橋先生、岡本で、ePosterで下記演題を発表しました。
徳永先生は、子宮頸部腺系病変の判定にp16(INK4a)/Ki67が有用であることを、石橋先生は子宮体癌I期の腹腔細胞診陽性が再発リスク因子であることを、岡本はセンチネルリンパ節での捺印細胞診の診断精度が迅速病理診断と同等であることを発表しました。岡本はBest ePosterに選ばれ、苦手な英語でのプレゼンを徳永先生と石橋先生に見守られながらなんとか終えることができました。
・徳永先生:Efficiency of a dual p16(INK4a)/Ki67 immunocytochemistry to evaluate atypical glandular cells of the uterine cervix
・石橋先生:Positive peritoneal cytology is a recurrence risk factor in stage I endometrial cancer
・岡本:Diagnostic accuracy of imprint cytology for sentinel lymph node metastasis in endometrial cancer
さて、今回は子宮内膜細胞診のワークショップにも参加しました。参加者は22人で私の他は外国人でした(講師除く)。ワークショップでは報告様式「The Yokohama System」とその報告様式にリンクしたLBC(SurePaht)標本のための判定アルゴリズムについて学びました。実際に正常~悪性の12例のLBC(SurePaht)標本をアルゴリズムに従って判定することができとても勉強になりました。
最後に、学会への参加・発表の機会を与えてくださった八重樫教授、医局の先生方、誠にありがとうございました。
開催期間:2019年3月16日~19日
湊 敬道
SGO 2019 婦人科腫瘍学会議Society of Gynecologic Oncology (SGO) Annual Meetingは第50回であり、3月16~19までハワイ、ホノルルコンベンションセンターにて開催されました。当教室より、高野先生、徳永先生、湊の三人で参加させていただきました。
開催地のご紹介は皆様ご存じであると思われますので詳しくは控えさせていただきますが、イメージ通りのハワイであり、飛行機を降りて帰国までずっと快晴でした。
さて学会内容ですが、minimal invasive surgery (MIS)の報告がやはり気になりました。
昨年のNew England Journal of Medicineで発表された子宮頸癌のRadical hysterectomy開腹術VS MIS 対比においてPFS、OSは開腹より劣っているとの報告があり、今回はそれを裏付ける報告が各国よりありました。
その代わりに、なんとかMISが優位な点を見つけようとしている発表もあり、今後のさらなる解析によりMISの適応が変化するかもしれません。卵巣癌ではSOLOプロジェクトの追加報告もありました。
徳永先生のポスターセッションもカメハメハホールにて滞りなく、無事に終了いたしました。
海外学会ならではと思われるのが、#MeToo、LGBTのセッションがあり、腫瘍学会の域まで広まっていることに衝撃を覚えました(出席できませんでしたが・・。)
ダイアモンドヘッドの頂にてワイキキビーチを見下ろし、豪快なステーキを先生方よりごちそうになりました。
学会のレセプションは想像通りのフラダンスでした。
高野先生は過密日程のため、早々に帰国されましたが、徳永先生と私は学会最終日前日まで滞在させていただきました。
レンタカーを借り、ハナウマビーチへ行き、満員のため締め出され、名もなきビーチで波と戯れ、朝食にパンケーキを食べてみてなど、一通りガイドブックに載っていることは二人で満喫させていただきました。
初海外学会ともあり、自分の英語力の足りなさを痛感し、世界に通じる研究と英語力を携え再度SGOへ参加する意思を胸に帰国の途へつきました。
最後になりましたが、学会参加の機会を与えていただいた八重樫教授をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。
開催期間:2019年5月2日~6日
湊 純子
2019年5月2日から5月6日まで米国ナッシュビルで開催された米国産婦人科学会(ACOG:American College of Obstetricians and Gynecologists)のAnnual Meetingに参加させて頂きました。ナッシュビルは人口約60万人のテネシー州の州都で、カントリーミュージックをはじめとするアメリカ音楽の聖地といわれています。現在も中心街は生演奏のサウンドが一日中絶えることがないほどでした。ミュージックシティーセンターという数多くの音楽イベントも開催される施設が学会会場となりました。
1日目はオープニングセレモニーに出席し、続いてPresident’s Program Lectureを聴講しました。ACOGのPresidentが進行役で3人の演者を迎えて「母体死亡の予防」についてディスカッションを行っていました。日本でいうシンポジウムに近いですが、驚いたのはその発表スタイルです。ステージの真ん中で4人とも立派な椅子に座ったままリラックスした様子で講演とディスカッションを行っており、まるで「徹子の部屋」の収録を見ているようでした。
午後には、FellowとYoung Physicianが臨床問題についてクイズ形式で対戦するというユニークなセッションを聴講しました。2日目はACOG恒例のLunch conversationに参加しました。円卓にて1人の専門家を9人の参加者が囲んでディスカッションする形式です。私は「Successful Laparoscopic Entry」というテーマを選択し、まず専門家のレクチャーを聴き、Entryの手技や自施設での臨床経験についてディスカッションを行いました。米国ではBMI>40の患者で臍上の筋腫に対してもpulmer positionからentryして腹腔鏡手術を行うと聞いて驚きました。午後は私達のe-ポスターでの発表がありました。私は「肥満と高齢患者に対する子宮体癌リンパ節郭清の臨床的意義について」プレゼンテーションを行い、緊張しながらも無事に終えることができました。
夜はPAC partyに参加し、お酒を飲みながら交流を深め最後には若手医師も教授も皆一緒にディスコを楽しみました。3日目はConvocationというACOG Fellowの認証式に参加しました。グリーンのマントに身を包み誇らしげに歩くFellowの姿が印象的でした。3日間を通して、事前に登録したセミナーをいくつか聴講しました。米国では、9価の子宮頚癌ワクチンを接種し90%以上の子宮頚癌が予防可能になること、全ての卵巣癌患者に対してBRCA検査が保険適応であることなど日本との医療制度の違いを感じました。各セミナー終了後の質疑応答が非常に活発で、質問者は特に名乗ることもなく次々と質問していました。4日目はナッシュビルにあるヴァンダービルト大学病院を見学し、午後は観光を楽しみました。
ヴァンダービルト大学は大学創立のために多額の寄付をした実業家Vanderbilt氏に因んで名付けられた私立大学です。分娩は約4000件/年間、婦人科は専用の手術室を3室持っておりロボット手術をはじめ多くの手術が施行されていました。米国南部の中核病院であり、我々と同年代の若手医師が慌ただしくも生き生きと働いていました。
私がACOGに参加して印象的だったことは2つあります。1つ目は米国人のプレゼンテーション能力の高さです。オープニングセレモニーでのPresidentの講演はまるで大統領の演説を聞いているような人を惹きつけるプレゼンでした。各セミナーの講師、若いFellow達、さらにはレストランの店員、観光案内所のスタッフまで、堂々と大きな声で淀みなく、時にはユーモアを交えてプレゼンしていました。話の内容が理路整然としていたかまでは判断困難でしたが、自分達の話す内容に対して誇りと自信に満ち溢れていました。プレゼンに苦手意識を持っている私にとってとても衝撃的でした。2つ目は女性医師の活躍です。学会会場にいると女性医師が半分以上占めており、日本より多い印象でした。各セミナーの講師も女性の比率が高く、各分野の教授が自分達の功績や今後の展望について講演されていました。そして、今年のACOGのトップ(President)は女性でした。彼女は忙しい中、気さくに私達との写真撮影に応じねぎらいの言葉を掛け、2日目の夜には一緒にディスコを踊り、とてもチャーミングな方でした。また今回ACOGに参加した若手医師6名のうち私を含め3名が女性で、3名とも育児中でした。それぞれの環境で日々奮闘している彼女達と育児や仕事の悩みを共有することができ、今後の励みになりました。さらに今回一緒にACOGに参加された九州大学教授の加藤聖子先生と直接お話させて頂いたことも貴重な経験となりました。このように今回のACOG参加で、多くのVitality溢れる女性医師に出会うことができ、今後医師を続けていく上で大きな刺激となりました。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった日本産科婦人科学会、ACOG、東北大学産婦人科の皆様に心より感謝いたします。
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留学期間:2021年3月~2024年2月
工藤 敬
2021年3月から約3年間、Post-docとして米国メリーランド州のNational Institute of Health(通称NIH)に留学させて頂きました。このような機会を頂戴しましたので、感謝の念を込めつつ留学生活で印象深かったことをご報告させて頂きます。
まずは渡米そのものに対して。今となっては忘れそうになりますが、渡米した時期はCOVID-19パンデミック真っ只中であり、大統領選挙や黒人デモもあってアメリカ情勢は非常に不安定な時期でした。親戚や友人からは「本当にこの時期にアメリカに行くのか?」と心配されたものです。何とか無事渡米し2週間の隔離生活を経てNIH勤務が始まりましたが、当時はマスク着用と手指消毒は当たり前、ミーティングは全てオンライン(しかもマスク越しなのでただでさえ苦手な英語が更に聞き取り辛い)、ラボメンバーとの接触を避けるため出勤時間をできるだけ被らないようにする、など直接的コミュニケーションはかなり希薄であり、なかなか厳しめかつ苦めな留学のスタートとなりました。
NIHのことを簡単に説明させて頂きますと、1887年に設立されたアメリカで最古の研究機関であり、Wikipedia上では300エーカー(東京ドーム26個分)の敷地に75棟以上の建物を有する巨大な研究施設です。あまりに敷地が広く、離れたラボとコラボする時は移動だけで一苦労です。周囲にはNatureやCellのような超有名雑誌に研究が載るような研究者がゴロゴロおり、非常に刺激的な環境でした。NIHから首都ワシントンD.C.までは車で30分程であり、COVID-19が落ち着いた後はスミソニアン博物館やワシントン記念塔、国会議事堂など様々な観光スポットを楽しめました。春になるとD.C.ではSAKURA MATSURIが大々的に開催され、日本文化がアメリカでも愛されていることを感じ誇らしくなったものです。
ボスであるChristina M. Annunziata(通称Tina)は臨床医としてもNIHで勤務しており、基礎研究でいいデータが得られたらそれを臨床試験へ反映させるという、いわゆるtranslational researchに取り組んでいます。ラボメンバーはPost-docやPost-bacc、Staff scientistなど併せて7-9人ほどであり「難治性である再発卵巣がんの新規治療を開拓する」という命題のもと、各々が試行錯誤しながらプロジェクトを進めています。私は「腹腔内の卵巣がん腫瘍塊を模した3Dがん幹細胞(いわゆるスフェロイド)の特異的代謝」に着目しており、様々な観点から3Dがん幹細胞が有する治療抵抗性のメカニズム解明に取り組みました。研究を纏めるにあたりMetabolomicsやFlow cytometry、RNA-sequencingなどより専門的な分野にも関わることができ大変勉強になりました。COVID-19パンデミックが落ち着くにつれて、in personミーティングや他ラボとのコラボもどんどん増え始め、「いよいよ留学らしくなってきたな」と嬉しく感じたものです。非常に稀少な最新デバイスや解析手法に携わることができる、というのも確かに留学の目的の1つだとは思いますが、個人的には国家や宗教・民族など含めた多種多様な考え方を持つ海外研究者と、拙い英語ながらもコミュニケーションをとりディスカッションしたことが、留学で得られた最も刺激的で忘れ難い経験だと確信しています。
また、当直やオンコール呼び出しもなく、ゆっくりと家族との時間を過ごせたことも留学ならではのメリットだと思います。日本の25倍の国土面積を持つアメリカで始めた家族の趣味はキャンプ。テントを立てたこともない、火を熾したこともない初心者家族でしたが、最終的にはグラントキャニオンやイエローストーン、ロッキーマウンテン国立公園で、その広大な大地、美しい手つかずの自然を眺めながらキャンプを楽しんで参りました。留学前はアメリカの観光にさほど興味を持ってませんでしたが、今となってはそのような自然に触れることができたのもアメリカ留学の醍醐味の1つと感じております。
留学前に宮城県立がんセンターの山田秀和総長先生から戴いたお言葉があります。「留学は学問的な成果が挙げられれば勿論最高ですが、後から振り返ると学問より経験です。留学はアメリカを経験するだけで十分です。研究成果は色褪せますが、経験はいつまでも鮮明に残ります。」このお言葉はアメリカ生活を全力で楽しむ上でとても支えになりました。帰国後は、私がこの言葉を後輩に伝えられるような人間になるべく邁進していく所存です。まずは、鈍りに鈍った臨床の勘を取り戻すのに全力を尽くして参ります。最後になりましたが、留学生活をご支援ご指導頂いた全ての方々に心より御礼申し上げます。
留学期間:2023年7月26日~8月3日
餅井 規吉
私は齋藤昌利教授の指導のもと、7月26日から8月3日までの9日間の予定で、西オーストラリア大学での羊研究のお手伝いや見学をさせていただきました。
内容としては人工胎盤の手術、胎仔エコー、羊水穿刺などを見学させていただきました。研究のお手伝いとしては羊の運搬や羊水穿刺、胎仔エコーをさせていただきました。医学研究、動物実験に実際に参加し貴重な体験を通し、今秋から始まる自分の研究へのモチベーション向上にもなりました。
また、初めて行うことが多く慣れない環境の中、現地のスタッフや東北大学から一緒に手伝いに来た仲間に優しく教えてもらいながら楽しく研究に参加することができました。また、研究者の方と話す機会があり、研究に対する姿勢、研究の進め方や考え方、どのように論文にするかなどを具体例を交えて分かりやすく教えていただきました。
最後に私事ではありますが、オーストラリアからの帰国の際にCOVID19 PCRが陽性となり予定通りの帰国ができませんでした。しかし、多くの方に支援していただき、無事に帰国することができました。このように多くの支えがあり今回の短期留学を成し遂げることができました。今回の留学経験を活かし、今後の自分の研究や臨床に励みたいです。
留学期間:2022年6月中旬~8月
齊藤 裕也(大学院 周産期医学分野)
2022年6月中旬~8月にかけて西オーストラリア州パースに滞在し、西オーストラリア大学(UWA)でのヒツジ胎児を用いた研究に参加させて頂きました。当科のヒツジ実験室といえば齋藤昌利教授のもと、熊谷祐作先生、高橋司先生夫妻(現在留学中)が在籍しております。西オーストラリア大学との研究協力は毎年行われていたものですが、コロナ禍のため3年間再開できずにいたもので、私としては今回が初めての渡濠でした。パースとUWAについては上記の先生方がこれまでも紹介してくださっておりますので、私は簡潔にどのような生活をしていたのかを述べさせていただきたいと思います。
新型コロナウィルス感染症の影響がまだまだ続く中、日本とパースを結ぶ直行便は運休となったままであり、シンガポール経由での渡濠となりました。仙台出発時から数えると約24時間近い移動で、久々の海外、さらには初めての土地ということもあり、着いて早々体調を崩してしまいました。スタートに躓いてしまった感は否めませんが、幸いコロナではなく、数日で体調も回復できました。そこからは改めて「積極的に何でも挑戦しよう」と心に決め、何をするにも新鮮に感じる日々はとても楽しく、有意義な時間を過ごさせて頂きました。
シープシーズンと呼ばれるこの約6週間は土日関係なく毎日実験がおこなわれ、文字通り休みなく生活していました。内容としてはヒツジ胎児へのカテーテル留置術、ステロイド投与、人工胎盤手術や超音波による胎児計測がメインでした。大型動物を取り扱う実験施設や機器の充実もさることながら、日本とは比にならないほどのヒツジの数に圧倒されたことは言うまでもありません。国を跨いででも、オーストラリアで実験を行う価値を感じた次第です。また、現地の産婦人科医師であり大学院生のDr. Shaunと一緒に実験を行う機会もありました。年齢も近く、同じ大学院生ということもあって、オーストラリアの産婦人科医療についてなども話ができたことは非常に興味深いことでした。英語でコミュニケーションをとりながら手技を行うことは初めてでしたが、お互いにやりたいことは直感的に理解でき、国境を越えても産婦人科医として考えることは似ていると感じることができました。実験を進めていく中で上手くいかずに落ち込むことや、疲れが溜まったりすることもあり、そんな時こそ“Respect”の精神の大切さを再認識させられ、言語や文化が違っても良好な人間関係を保つには必要なことだと身をもって知ることができました。
コロナ禍ということもあり、実験後に積極的に街に繰り出す、とは行きませんでした。驚いたことに、パースでは公共交通機関等でのマスク着用は義務つけられているものの、街中ではマスクをしている人は極少数でした。世界有数の美しい街と称されるパースは評判通りとても美しく、気候も良いためキングスパークを散歩したり、宿の周辺をジョギングしたりするだけでもとても心地の良い場所でした。夕飯は宿で自炊をすることがほとんどで、メインはなんといってもオーストラリアビーフのステーキ。日本では見たことがないような塊肉を買い、上手に焼けるか日々試行錯誤するのも非常に楽しいものでした。
ラボにて(高橋先生&熊谷先生と)
Dr. Shaunと
マットさん&餅井先生と
今回は短期留学という形で海外での研究生活を体験させて頂きました。今まで留学という響きに憧れこそあれど具体的なイメージが何もない状態でしたが、いつかは留学して、自分のプロトコールを持って研究してみたいと考えるようになりました。もちろん英語の能力や留学に関わる必要条件など、まだまだ満たしていないものが多数あるのは理解しているつもりです。今回の滞在を通じて、日本語の学会発表や論文で終わらせるのではなく、英語で発表し世界と議論しなければもったいないと感じるようになりました。日本は便利な国ですし、オーストラリアにいても“技術の日本”と現地の方からよく言われました。しかし日本でいくら優れた研究をしていても世界へ示していかなければその先はつながらないと思いますし、昨今の情勢を見ていると日本はこれからも“技術の日本”でいられるのか、と不安にすら感じます。このヒツジ研究を通して、日本から世界へ発信していく一人になれるよう、日々精進していきたい。そう感じさせられた濠生活でした。
最後になりますがコロナ禍のお忙しい中、快く送り出してくださった八重樫教授をはじめとする医局員の先生方、渡濠を支えてくださった秘書の皆様やUWAのスタッフの皆様には大変感謝しております。この経験を活かし、さらにステップアップした姿をお見せできるよう頑張っていきたいと思います。
キングスパークから見た
パース市街地の夜景
留学期間:2021年-
濱田 裕貴(産婦人科)
なぜ留学に行こうと思ったのか?基礎研究に興味があり医学部に入るも、分娩の魅力に取りつかれ産婦人科医として歩み始めた。野戦病院で臨床を叩込み、大学病院での先端医療に触れ、現代医療の限界を感じた。産科医にできることは、安全な児娩出と新生児医療への架橋のみ。「周産期医学の発展には基礎研究が不可欠」という一種の使命感を抱き大学院に進み研究を始めた。学位取得後も研究に打込める環境を求め、行き着いた答えが海外研究留学。いわゆるコネは無かったが、大学院時代の研究成果を発表した国際学会で、とある研究者と知り合い、運よく留学先が決まった。
留学先のカナダは移民に優しい国で、申請にかかる一切の雑用を行う「ビザ申請代行業」なるものが存在し、多忙な臨床業務を抱える身としては利用しない手はない。春に単身渡加、生活基盤を整え、夏休みに家族を迎え入れた。実はコーヒー好きなカナダ人、某大手コーヒー店の国民一人当たりの店舗数が、実は世界1位。宮城県で例えるなら、日本では大崎市(13万人)に1店舗あるのに対し、カナダでは亘理町(3.5万人)規模にも1店舗存在することになる。雪国ながらスポーツは盛んで、夏は野球(MLB:Blue Jays図1)やテニス(ATP1000:Canadian open)、冬はバスケットボール(NBA:Raptors)とアイスホッケー(NHL:Maple Leafs)など、年中世界一流のスポーツを楽しめる。春はメープルシロップ狩り、夏はキャンプ(図2)、秋は果物狩り、冬はスケート(図3)と、アウトドアも通年で充実。留学中の身分ゆえ経済的な余裕は無いものの、仕事は9時-5時/平日のため家族との時間が多く、すごく満たされた生活であった。
Blue Jays ホームスタジアムで観る
本場の野球は鳥肌もの
キャンプには何度も行き、
だいぶこなれた雰囲気
少し舵を切り、研究生活について述べる事としよう。留学先はトロント大学医学部生理学教室Stephen Matthewsラボ(図4)。総勢10名の大きくないラボだが、多民族国家カナダを象徴するような民族構成で、欧州、アジア、南米出身の研究者が在籍し、互いに敬い、思いやり、程よい距離感で接している。ラボの研究テーマは、妊娠中のステロイド暴露が胎児の脳発達に与える影響。大学院の時との一番の違いは、研究員各々が自分主導のプロジェクトを持ち、高い士気を保ちながら研究成果を挙げていることである。これには2つのカラクリがある。1つ目は「自主性」。研究の立案、実験、解析、投稿に至る課程を自分で考える。テーマは与えられるより、自分で導き出した(実はボスに導かれている?)方が、研究に対するモチベーションが遥かに高い。2つ目は「報酬」である。研究員は大学生であっても給与が支払われる。その背景には潤沢な研究資金がある。研究所主催のチャリティーイベントやプロスポーツ選手からの多額の寄附などが、研究助成金の資金源となっている。
留学最大の収穫は、ディスカッション能力の飛躍的な向上であろう。ラボには「自分のデスク」は存在せず、共用の長机が一つあるだけ。なんとなくの定位置こそあるものの、仕切りが無いため開放的で、日常的に雑談交じりの討論が行われている。ミーティングも頻繁にあり、こうした日々の討論を積み重ねが、いざ学会での受答えに活きる。学会参加が多いのも留学ならでは。留学中3年間で国際学会2回、国内学会2回、いずれも口頭発表の機会に恵まれた。欧米人はプレゼンが上手いと称されるが、努力の上に成り立っていることを痛感する。いざ口頭発表に選出されると、毎週のように発表の練習が行われる。スライド構成のみならず、配色、配置、フレーズ、アニメーションなど、事細かにダメ出しが入る。それが本番での良い発表につながる。幸いにも国際DOHaD学会で若手優秀口頭発表賞を受賞した(図5)。
無料で開放される屋外スケート場
毎年クリスマスには
ラボの皆でディナーを
公私ともに充実した留学生活は、コロナ禍により突然の終焉を迎える。大学全体がロックダウンされ研究活動は凍結。日本行きの飛行機も2週間以内の欠航が決まり、慌てて帰国の途に就いた。ラボで送別会が出来なかったことが悔やまれる。しかしコロナで良いこともある。リモートワークが一般的になり、日本からでもリモートで研究を進め、論文投稿まで漕ぎ着けた。今でもラボのWebミーティングに参加している。
帰国後は、周産期の臨床現場に身を置きつつ、日常臨床の疑問を解決する研究を行うのが理想だが、日々の臨床・研究業務に埋もれぬよう必死に働いているのが現実だ。支援いただいた多くの方々に感謝し、後輩に研究や留学の支援をしつつ、産婦人科医学の発展に少しでも貢献したい。
国際DOHaD学会2019で
若手優秀口頭発表を受賞
教室員会だより11月発行の『留学先で見たこと・聞いたこと』でも掲載されました。