国際学会参加報告/留学
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開催期間:2019年10月11日~12日
張 雪薇
今回、私は2019年10月11-12日にかけて韓国仁川市で開催されたThe 6th Biennial Meeting of Asian Society of Gynecologic Oncology に参加し、“Tyrosine kinase receptor TIE-1 mediates cell growth by regulating PI3K/Akt signaling pathway in PI3K-high-expressing ovarian cancer”というタイトルで口頭発表を行ってきました。
二年に一回の大きな集まりで、著名な方から若手まで多くの研究者が集い、シンポジウム、オーラル共に活発なディスカッションが行われており、連日のセッションはとても内容の濃いものでした。世界中の研究者たちと交流することで、研究内容はもちろん、他国の考え方また、会場の器材、設備等、さまざまな面において日本の学会にはないレベルの高さを痛感した学会でした。
自身の発表については、海外の研究者たちとディスカッションすることで、自身の見聞を広げることができ、今後の研究遂行に役立つ機会となりました。また、Molecular Dissection of Ovarian Clear Cell Carcinoma など、興味深いシンポジウムが数多く行われていたり、自身の研究に関連する内容のポスター発表が行われたりと、自身の研究に活かせる知見を得ただけでなく、幅広い分野における最先端の研究成果を学ぶことができました。さらに、学会に来ていた他国の学生およびポーランド出身のポスドクの方と食事を交えて研究の討論や日常会話を交わすなどの交流をはかり、研究者の輪を広げる活動も行うことができました。
このように今回の世界最先端の国際学会を通じて、世界の婦人科腫瘍学の潮流を肌で感じ、研究面、語学面および文化の違いなど様々な点において学ぶことができ、非常に貴重な体験となりました。この学会で得たものを今後の研究や生活に生かしていきたいと思います。
懇親会の夜には、参加者全員は笑顔で夕食音楽会を開きました。音と光の美しさで会場の空気が一変し、まるで学術講演会ではないような雰囲気に魅力を感じ、大変楽しい時間を過ごすことが出来ました。
最後になりましたが、このような機会を与えて下さり、ご指導してくださった八重樫教授、石橋ますみ先生をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に感謝申し上げます。
開催期間:2019年5月5日~9日
岡本 聡
2019年5月5日から9日までの5日間、20th International Congress of Cytologyに参加させて頂きましたので報告します。
学会は、シドニーのダーリングハーバーにあるインターナショナルコンベンションセンターで行われました。ターリングハーバーはもともと貿易港で造船所や倉庫が多く建ち並んでいたエリアだったようですが、現在はショッピングセンターや動物園、水族館、映画館、カジノ、レストラン、バーなどがあり、日本の横浜のみなとみらいのように海辺で食・買・遊が楽しめる場所です。
学会に参加したのは徳永先生、石橋先生、岡本で、ePosterで下記演題を発表しました。
徳永先生は、子宮頸部腺系病変の判定にp16(INK4a)/Ki67が有用であることを、石橋先生は子宮体癌I期の腹腔細胞診陽性が再発リスク因子であることを、岡本はセンチネルリンパ節での捺印細胞診の診断精度が迅速病理診断と同等であることを発表しました。岡本はBest ePosterに選ばれ、苦手な英語でのプレゼンを徳永先生と石橋先生に見守られながらなんとか終えることができました。
・徳永先生:Efficiency of a dual p16(INK4a)/Ki67 immunocytochemistry to evaluate atypical glandular cells of the uterine cervix
・石橋先生:Positive peritoneal cytology is a recurrence risk factor in stage I endometrial cancer
・岡本:Diagnostic accuracy of imprint cytology for sentinel lymph node metastasis in endometrial cancer
さて、今回は子宮内膜細胞診のワークショップにも参加しました。参加者は22人で私の他は外国人でした(講師除く)。ワークショップでは報告様式「The Yokohama System」とその報告様式にリンクしたLBC(SurePaht)標本のための判定アルゴリズムについて学びました。実際に正常~悪性の12例のLBC(SurePaht)標本をアルゴリズムに従って判定することができとても勉強になりました。
最後に、学会への参加・発表の機会を与えてくださった八重樫教授、医局の先生方、誠にありがとうございました。
開催期間:2019年3月16日~19日
湊 敬道
SGO 2019 婦人科腫瘍学会議Society of Gynecologic Oncology (SGO) Annual Meetingは第50回であり、3月16~19までハワイ、ホノルルコンベンションセンターにて開催されました。当教室より、高野先生、徳永先生、湊の三人で参加させていただきました。
開催地のご紹介は皆様ご存じであると思われますので詳しくは控えさせていただきますが、イメージ通りのハワイであり、飛行機を降りて帰国までずっと快晴でした。
さて学会内容ですが、minimal invasive surgery (MIS)の報告がやはり気になりました。
昨年のNew England Journal of Medicineで発表された子宮頸癌のRadical hysterectomy開腹術VS MIS 対比においてPFS、OSは開腹より劣っているとの報告があり、今回はそれを裏付ける報告が各国よりありました。
その代わりに、なんとかMISが優位な点を見つけようとしている発表もあり、今後のさらなる解析によりMISの適応が変化するかもしれません。卵巣癌ではSOLOプロジェクトの追加報告もありました。
徳永先生のポスターセッションもカメハメハホールにて滞りなく、無事に終了いたしました。
海外学会ならではと思われるのが、#MeToo、LGBTのセッションがあり、腫瘍学会の域まで広まっていることに衝撃を覚えました(出席できませんでしたが・・。)
ダイアモンドヘッドの頂にてワイキキビーチを見下ろし、豪快なステーキを先生方よりごちそうになりました。
学会のレセプションは想像通りのフラダンスでした。
高野先生は過密日程のため、早々に帰国されましたが、徳永先生と私は学会最終日前日まで滞在させていただきました。
レンタカーを借り、ハナウマビーチへ行き、満員のため締め出され、名もなきビーチで波と戯れ、朝食にパンケーキを食べてみてなど、一通りガイドブックに載っていることは二人で満喫させていただきました。
初海外学会ともあり、自分の英語力の足りなさを痛感し、世界に通じる研究と英語力を携え再度SGOへ参加する意思を胸に帰国の途へつきました。
最後になりましたが、学会参加の機会を与えていただいた八重樫教授をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。
開催期間:2019年5月2日~6日
湊 純子
2019年5月2日から5月6日まで米国ナッシュビルで開催された米国産婦人科学会(ACOG:American College of Obstetricians and Gynecologists)のAnnual Meetingに参加させて頂きました。ナッシュビルは人口約60万人のテネシー州の州都で、カントリーミュージックをはじめとするアメリカ音楽の聖地といわれています。現在も中心街は生演奏のサウンドが一日中絶えることがないほどでした。ミュージックシティーセンターという数多くの音楽イベントも開催される施設が学会会場となりました。
1日目はオープニングセレモニーに出席し、続いてPresident’s Program Lectureを聴講しました。ACOGのPresidentが進行役で3人の演者を迎えて「母体死亡の予防」についてディスカッションを行っていました。日本でいうシンポジウムに近いですが、驚いたのはその発表スタイルです。ステージの真ん中で4人とも立派な椅子に座ったままリラックスした様子で講演とディスカッションを行っており、まるで「徹子の部屋」の収録を見ているようでした。
午後には、FellowとYoung Physicianが臨床問題についてクイズ形式で対戦するというユニークなセッションを聴講しました。2日目はACOG恒例のLunch conversationに参加しました。円卓にて1人の専門家を9人の参加者が囲んでディスカッションする形式です。私は「Successful Laparoscopic Entry」というテーマを選択し、まず専門家のレクチャーを聴き、Entryの手技や自施設での臨床経験についてディスカッションを行いました。米国ではBMI>40の患者で臍上の筋腫に対してもpulmer positionからentryして腹腔鏡手術を行うと聞いて驚きました。午後は私達のe-ポスターでの発表がありました。私は「肥満と高齢患者に対する子宮体癌リンパ節郭清の臨床的意義について」プレゼンテーションを行い、緊張しながらも無事に終えることができました。
夜はPAC partyに参加し、お酒を飲みながら交流を深め最後には若手医師も教授も皆一緒にディスコを楽しみました。3日目はConvocationというACOG Fellowの認証式に参加しました。グリーンのマントに身を包み誇らしげに歩くFellowの姿が印象的でした。3日間を通して、事前に登録したセミナーをいくつか聴講しました。米国では、9価の子宮頚癌ワクチンを接種し90%以上の子宮頚癌が予防可能になること、全ての卵巣癌患者に対してBRCA検査が保険適応であることなど日本との医療制度の違いを感じました。各セミナー終了後の質疑応答が非常に活発で、質問者は特に名乗ることもなく次々と質問していました。4日目はナッシュビルにあるヴァンダービルト大学病院を見学し、午後は観光を楽しみました。
ヴァンダービルト大学は大学創立のために多額の寄付をした実業家Vanderbilt氏に因んで名付けられた私立大学です。分娩は約4000件/年間、婦人科は専用の手術室を3室持っておりロボット手術をはじめ多くの手術が施行されていました。米国南部の中核病院であり、我々と同年代の若手医師が慌ただしくも生き生きと働いていました。
私がACOGに参加して印象的だったことは2つあります。1つ目は米国人のプレゼンテーション能力の高さです。オープニングセレモニーでのPresidentの講演はまるで大統領の演説を聞いているような人を惹きつけるプレゼンでした。各セミナーの講師、若いFellow達、さらにはレストランの店員、観光案内所のスタッフまで、堂々と大きな声で淀みなく、時にはユーモアを交えてプレゼンしていました。話の内容が理路整然としていたかまでは判断困難でしたが、自分達の話す内容に対して誇りと自信に満ち溢れていました。プレゼンに苦手意識を持っている私にとってとても衝撃的でした。2つ目は女性医師の活躍です。学会会場にいると女性医師が半分以上占めており、日本より多い印象でした。各セミナーの講師も女性の比率が高く、各分野の教授が自分達の功績や今後の展望について講演されていました。そして、今年のACOGのトップ(President)は女性でした。彼女は忙しい中、気さくに私達との写真撮影に応じねぎらいの言葉を掛け、2日目の夜には一緒にディスコを踊り、とてもチャーミングな方でした。また今回ACOGに参加した若手医師6名のうち私を含め3名が女性で、3名とも育児中でした。それぞれの環境で日々奮闘している彼女達と育児や仕事の悩みを共有することができ、今後の励みになりました。さらに今回一緒にACOGに参加された九州大学教授の加藤聖子先生と直接お話させて頂いたことも貴重な経験となりました。このように今回のACOG参加で、多くのVitality溢れる女性医師に出会うことができ、今後医師を続けていく上で大きな刺激となりました。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった日本産科婦人科学会、ACOG、東北大学産婦人科の皆様に心より感謝いたします。
開催期間:2018年3月6日~10月
熊谷 祐作
3月6日から3月11日までカリフォルニア州サンディエゴで開かれましたSRI(Society for Reproductive Investigation)という学会に参加し、ポスター発表を経験させていただきました。
私の発表は、「Post-surgical maintenance of cardiac function in an ex vivo premature lamb model」と題して、人工胎盤に繋いだ胎仔の術後評価として胎仔循環評価を超音波にて行い、後負荷・後負荷上昇の原因と改善点について考察したものでした。私は大学院生として応募したため、2人の採点官にプレゼンテーションをする機会がありました。しかし、その採点官から研究内容に関する質問をしてもらえず、今回の発表に興味を持ってもらえたかについては実感を得られませんでした。採点官以外の方からは、プレゼンを求められる機会がそれなりにあり、また質問して下さる方々に恵まれ、研究の面白さを共有できた感がありましたが、興味を持ってもらえるようなプレゼンテーションを英語で行う難しさを強く実感しました。また、私が学生時代に病院実習でお世話になった宮崎大の先生方、宮崎大からロサンゼルスに留学し羊の低酸素実験をしている先生、慶応大で臨床研究している先生方と研究結果を共有し、交流をすることができました。
興味深かった演題を3つ掲載させていただきます。
・Multi-Parametric MRI in Early Pregnancy as a Possible Predictor of Ischemic Placental Disease.
UCLAからの発表です。妊娠高血圧腎症と胎児発育不全は、近年どちらも妊娠初期の胎盤形成不全に基づくplacental ischemic diseaseという概念でその病態を説明しようとしていますが、これをfunctional-MRIで胎盤血流を測定した研究です。結果によると、妊娠15-17週に最も顕著に胎盤血流(の中でもhigh placental blood flow (hPBF)率)が低下したため、15−17週にMRIを撮像すれば良いと示唆していました。当科の放射線診断科でもこのようなMRI撮像が今後できれば大変有意義だと感じました。
・IL-1 Receptor Antagonist Improves Trophoblast Invasion, Endothelial Development and ZIKV Sequelae in Offspring.
john Hopkins大学の発表です。他にもジカウイルスに関する発表はoral、poster共にたくさんありました。これはマウスを使った動物実験ですが、感染マウスではTrophoblast invasionやvimentin発現が低下し、神経行動学的テスト結果も悪化しますが,IL-1receptor antagonistを投与するとそれらが改善するため治療的効果を認めたというものです。
・Oral Steroids for Maturation of the Preterm Lung: Pharmacokinetic and Efficacy Data from a Sheep Model of Pregnancy.
私が所属する研究室と共同研究をしているにしオーストラリア大学のマット先生の発表ですが、母体への経口ステロイド投与で胎児の肺成熟を促進するという内容です。これが臨床で応用されれば、母体にリンデロンの筋注をせずに内服で済ますことができるため、投与の簡便さ、経済的にも大変理にかなっている研究発表でした。私もパースで手術手伝いやお母さん羊の口腔内投与を手伝わせていただいた実験の研究結果です。
夕方からはサンディエゴの飲食店へ繰り出し、クラフトビールやハンバーガー、Napaのワイン、イタリア料理、シュラスコを含むブラジル料理、スペイン料理、日本の居酒屋など楽しみました。日本居酒屋のお造りを含め、全て大変美味しかったです。同じ研究室でオーストラリアへ留学中の臼田先生にはたくさんご馳走になりました。
このような昼夜ともに素晴らしい経験をすることができ、今後の臨床、研究にも俄然意欲が湧く、初めての国際学会参加となりました。八重樫先生、研究室の上司で医局長の齋藤先生をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。
開催期間:2018年3月6日~10月
上原 知子
3/6~10の5日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンディエゴで開催されたSRI 65th Annual Scientific Meetingに参加させていただきました。サンディエゴはアメリカ人が選ぶ住みたい街No1ともいわれ、1年を通じ温暖な気候と多様な自然に恵まれ、人気の観光スポットも多く、治安の良いとても魅力的な街でした。
東北大学からは私の他に湊 敬廣先生、渋谷 祐介先生、和形 麻衣子先生、富田 芙弥先生、熊谷 祐作先生が参加しました。富田先生はご家族で参加されるとの事で、私も夫と息子と一緒に参加させていただきました。
学会の合間には観光もでき、中でも富田先生とご一緒したアンザボレゴ砂漠は想像以上の絶景でとても感動しました。学会会場の近くにはダウンタウンがあって雰囲気の良いレストランやバーが軒を連ねており、英語でドキドキしながら注文した料理はどれもすごく美味しかったです。3歳の息子は初海外で陽気な雰囲気にテンションが上がり、街中で音楽にのって踊りだしたりと満喫していました。
私は大学院生ではなく、国際学会なんて縁が無いものと思っていましたが、齋藤昌利先生にご指導頂き、思いがけず発表の機会を頂きました。これまで発表してきた一例報告とは違い、今回は手術手技の有用性を示すために、200症例以上を抽出しデータ集めからその統計処理、結果の示し方など、初めての事ばかりでした。さらにそれを英語にしてポスターを作る作業は骨の折れるものでしたが、その過程でも多くのことを学ぶことができました。
学会では世界各国から様々な分野での発表があり、世界で研究されている最新の知見を得ることができ、とても興味深く、視野が広がりました。臨床分野では肥満の妊娠への影響に関する発表が多い印象を受け、世界的な問題なのだと感じました。私は英語が苦手で、聞くのも話すのも読むのも儘ならずとても悔しい思いをしましたが、一緒に参加した先生方は英語でのプレゼンテーションやディスカッションを堂々とこなし、他の参加者の発表にも積極的に質問をされており目標にしたいと思いました。
国際学会へ参加させていただいたことは大きな経験になり、また英語の重要性と自分の勉強不足を改めて実感しました。今後はもっと研鑽を積み、是非また参加して先輩方のように発表やディスカッションを通して、より多くのことを得られるようになりたいと思います。
最後に、今回学会への参加・発表の機会を与えて下さり、ご指導してくださった八重樫教授、齋藤昌利先生、薬剤部の小原拓先生をはじめ、医局の先生方に感謝申し上げます。
開催期間:2018年3月6日~10月
湊 敬廣
2018年3月6日から9日までの4日間の日程でアメリカのサンディエゴで開催された65th SRI (Society for Reproductive Investigation) Annual meetingに参加させていただきました。サンディエゴはカリフォルニア州の南端、メキシコとの国境付近に位置しています。人口が140万人と同州の中でロサンゼルスに次ぐ大きな都市であり、年間晴天日数が300日以上という陽気で温暖な気候から、アメリカ人がリタイアしたら住みたい街の2位にランクインされているみたいです。メキシコとの国境に近接しており、メキシコからの移民も多いためにサンディエゴはタコスが大変美味しいのが有名で、街の至るところにタコスを食べさせてくれるお店があります。またアメリカ海軍の基地としても有名で、少し前の映画ですがトム・クルーズ主演の『トップガン』の舞台になった街でもあり、ミッドウェイという退役した空母が博物館として一般に公開されており、私もルームメイトの渋谷先生と一緒に見学に行きました。全部の施設を見学するのに3時間ほどかかり、そのスケールの大きさに圧倒されてしまいました。
学会の会場はサンディエゴ港に面したHilton San Diego Bayfront Hotelで開催されました。当教室からは渋谷先生、富田先生、上原先生、熊谷先生、和形先生、湊とトロントで留学中の濱田先生の7人で参加しました。学会1日目はSatellite sessionが行われ、各分野のエキスパートが各々の研究についての最新の知見を発表していました。2日目以降は参加者のOralとPosterによる発表が行われました。私は3日目Poster発表で自分の研究テーマである”FGR胎仔における自律神経機能と分娩時脳出血の発症との関連”について発表しました。In-Trainingというカテゴリーでエントリーしており、これはいわゆる学会参加費の学割みたいなもので安くなるのですがその代わりに評価者2人の前でプレゼンおよび質疑応答が義務付けられます。質問は結構鋭い内容でたじたじとなる場面もありましたが、私のつたない英語での応答をしっかりと最後まで聞いてくれて、理解しようとしてくれる姿勢は大変有り難いものでした。また他のセッションでは、満期産の分娩開始の機序にも早産と同様に炎症が関連しており、子宮筋層内の抗炎症作用を持つ遺伝子発現の低下や胎盤内のT細胞などの免疫細胞数の減少が関連しているという発表や、米国での新生児脳障害に対する臍帯血幹細胞移植の臨床研究の結果についての発表など大変興味深い発表が多く勉強になりました。SRIは生殖内分泌関連や産科関連の演題がメインとなる学会ですが、若手の研究者を育成する事にも力を入れており、プログラムの中にも”Connection corners”という若手研究者が集いキャリアデザインや研究費取得や交渉についてのノウハウなど具体的なアドバイスをベテランの研究者に聞けるプログラムが用意されていました。
夜にはサンディエゴのもう1つの名物でもある地ビールを飲みながら、今回参加したメンバーと共に親睦を深めました。濱田先生のカナダでの留学生活の近況や苦労話などが聞けてとても充実した時間となりました。4日間の日程で参加した学会ですが、知的好奇心を刺激され大変充実した学会となりました。英語で意思疎通に関しては上達しなければと痛感させられました。日頃より英語に触れる機会を増やして少しでも上達していきたいと思います。
最後になりましたが、今回学会参加の機会を与えて頂いた八重樫教授をはじめ、諸先生方にお礼を申し上げたいと思います。
開催期間:2018年3月6日~10月
富田 芙弥
3月6日から10日まで、San DiegoのHilton San Diego Bayfrontで行われたSRI 65thAnnual Scientific Meetingに出席してきました。San Diegoはアメリカ西海岸のメキシコに接する都市で、温暖な気候と美しい海が特徴の街です。成田→San Diegoの直行便が就航しており、10時間ほどのフライトで行くことができます。実は学生時代にSan Diegoで行われた学会でポスター発表をしたことがあり、今回は12年ぶりの訪問でした。12年前はぜひまたもう一度来たいと思って帰りましたので、今回は願いが叶って感激でした。
初日の3月7日はSatellite symposiumで、各分野のspecialistが30分ずつ講演しました。私はPreterm Birth International Collaborative (PREBIC) とのJoint Satellite Symposiumに参加しました。内容はPreterm Birthの分子生物学的メカニズムが主でした。どの講演もとても興味深く、最新の知見もたくさん知ることができて非常に良かったです。
3月7日の夜はトロントに留学されている濱田先生、オーストラリアに留学されている新生児科の臼田先生も交えて懇親会を行い、色々な話を聞くことができました。懇親会はSan Diego名物のクラフトビールballast pointのお店で行我、皆でたくさんビールを飲みました。
3月8日-10日はoral sessionとposter sessionが中心でした。Oral presentationは大学院生やPost doctoral fellowが主に発表していたようでしたが、一人10分と持ち時間が長く、研究の意義・背景から今後の展望まで丁寧に説明された発表が多い印象でした。一人で複数の発表をしている方も多く、研究者の熱意を感じて刺激になりました。Poster sessionはClinicalな内容から基礎的な内容まで幅広く、多くの分野の研究者が発表していました。少しPosterを横切るだけで、”Are you a doctor in this field?” “May I explain?”などとたくさん話しかけられ、おかげでたくさんのposter発表を見ることができました。自分の発表もJudgeも含めて色々な方に聞いていただいたり、質問を受けたりすることができました。しかし、英語力不足から聞き返してしまったり、聞きたいことが十分に聞けなかったりしたので、英語力をつける必要性を感じました。
素晴らしい研究の数々に触れることができ、これから研究をするにあたってのモチベーションが非常に高くなりました。貴重な機会を作っていただいた八重樫先生、齋藤昌利先生をはじめとする医局の先生方に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
開催期間:2017年7月1日~7日
久野 貴司
2017年7月1日から7日の日程でスイス、ジュネーブにて開催された33rd ANNUAL MEETING European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)に参加してきました。
ジュネーブまでの道のりは険しく長いものでした。
まずは仙台駅から仙台空港までのアクセス線が停電のため運休していました。運行再開の見通しは約30後。間に合わないと判断してタクシー乗り場に行くも早くも行列が。ハラハラしながら仙台空港へ到着。何とか間に合い、成田を経由してパリに向かいました。パリまでは約11時間。固まった体でゲートへ向かうとそこにも行列。原因は不明ですが入口が閉鎖されており、再開通の目途も立たないとのこと。
ひとまずフランスに入国し、そこから発着ゲートへ。発着ゲートまでの道のりは人が多すぎて列すら作れないような状況で、まさに大混乱でした。その影響でジュネーブに向かう予定便はキャンセル。空港で一夜を明かしました。ちなみに「ターミナル」「パリ空港の人々」のモデルになった人物はこのシャルルドゴール空港で15年以上も生活していたそうです。結局翌日にバスでジュネーブへ向かい、24時間遅れで到着しました。そのためpre-congress courseには参加できず、非常に残念でした。
学会にはヨーロッパだけでなく、アジア、アメリカ、エジプトなどたくさんの国と地域から参加していました。生殖医療の学会のため、産婦人科医だけでなく看護師、胚培養士、基礎研究者など様々な人が参加しておりました。
学会の内容は僕が聞いていた範囲では臨床内容のRCTを示したものが多いように感じました。やはり普段行っている臨床もエビデンスを意識してやっていかなければならないと再認識しました。他にも基礎医学的な内容から最先端医療の話題から社会問題など多岐にわたるテーマが扱われていました。学会では事前にスマートフォンやタブレット用のアプリが配信されており、アプリで学会のスケジュールや発表内容のアブストラクトなどを見ることができ非常に便利でした。いずれは「この口演を聞いた人はこのポスターも見ています」のような「オススメ」が表示されたりするのでしょうか。
自分のポスター発表はe-poster方式でした。20台ほどの巨大液晶パネルとそれぞれの前にタブレットがおいてあり、タブレットを操作すると巨大液晶パネルにポスターが表示されます。タブレットにはポスターのサムネイルが表示される形式であり、パッと見て目を引くようなポスターを詳しく見る、というようなことができました。まるでポスター会場をうろうろしているような気分になりましたが、ディスカッションなどはなく、少し寂しいと思いました。ただし、ポスターでも優秀演題に選ばれればプレゼンとディスカッションの時間が与えられるため、今度はそのような演題を出せるようにがんばろうと思いました。
学会中には日本から参加されている他大学の先生方と食事をご一緒させていただきました。普段お話しできない先生方からお話を伺い、とても勉強になり、よい刺激となりました。
最後に、学会参加の機会を与えていただいた八重樫教授、学会参加にお誘いいただいた立花先生、医局の諸先生方に御礼申し上げます。ありがとうございました。
開催期間:2017年7月1日~7日
高橋 聡太
2017年6月15日から18日の4日間の日程で、香港にて開催された25th Asian & Oceanic Congress of Obstetrics and Gynecology(AOCOG)に参加してまいりました。仙台から香港はおよそ10時間の旅程。現地はとても蒸し暑く、不快指数高め。人口密度、車の密度ともに高く、常にクラクションが鳴り止まない、沸騰するアジアを象徴するような街でした。
学会はHong Kong convention and exhibition centre (香港會議展覽中心)。香港島、湾仔地域沿岸に位置したくさんの催し物が絶えず開かれている場所でした。
学会には中国から東南アジア、中央アジア、オセアニアにかけてたくさんの国と地域から産婦人科医や助産師が参加者しておりました。
学会の内容はかなり多岐にわたりました。Plenary speakerの一人、Prof. Mats Brännström(スウェーデン、Gothenburg univ)が子宮移植に関する最新の臨床データの報告をしたかと思えば、同じくPlenary speakerの一人、インドBhailal Amin General Hospital のDr Robit Bhattはアジア諸国におけるDomestic violenceの現状を報告するなど、最先端医療の話題から、アジア全体の産科および女性医学に関する社会的問題も議論されており、扱うテーマとしてはかなり広い学会でありました。心配した不得手の英語の方ですが、全体的にゆっくりと喋ってくれていたり、やや文字が多め(ほとんど原稿?)のスライドを提示してくれていたりして、幸い自分でも凡そ内容は理解できました。
学会全体のスケジュールは割りとゆったりとしていて、大体2時間くらいのスケジュールが終わると、必ずtea breakをはさみます。このあたりは英国流なのでしょうか?ただコーヒーや紅茶の茶請けとして、現地で流行しているというクッキーの他に春巻などの揚げ物もあるのは香港流?会場の雰囲気も穏やかで、「日本から持ってきた第70回日産婦のポスターを貼ってもいいか?」と会場係の人(?)に尋ねると、好きにしなと言わんばかりに掲示物用の大量の両面テープを渡してくれました。ここに、今回の学会における最大のミッションが達成されました。
自分のポスター発表はというと、今回はelectrical poster (e-poster)といって、タッチパネル式電子掲示板で、見たい演題を検索し、選択すると内容が表示されるという方式でした。しかし200題以上あるポスター演題に対して、電子掲示板はなんとわずか6台。一応フリーディスカッションという建前ではありましたが、わざわざ検索し、選択しないとポスターが出てこないため、プレゼンやディスカッションも、優秀演題に選ばれた人でないと、なかなかさせてもらえない状況で、少しばかり肩透かしにあった感じでした。今度はちゃんと喋らせて貰えるような演題を出そう、と大いに思いました。
日産婦でせっかく英語のポスターを作ったので、「どれ一つ海外学会にも出してみる」か、と軽い気持ちで参加してみた初の国際学会。アジアに住む一産婦人科医として、今までより少し広い視野を得るよい機会になりました。
最後になりましたが、学会参加の機会を与えていただいた八重樫教授をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。
開催期間:2017年5月1日~4日
張 雪薇
今回、私は2017年5月1-4日にかけて米国ニューヨーク州ポートジェファーソンで開催されたInternational Ceramide Conference に参加させていただきました。この学会はスフィンゴ脂質セラミドを中心とする国際学会であり、今年参加者数は約150人であり、今回で9回目の開催となります。
この学会では、単にスフィンゴ脂質代謝・調節だけでなく、スフィンゴ脂質セラミドを用いたがん治療の可能性など、研究室にいるだけでは学べない、幅広い分野の発表を見ることができました。日本の学会と比較すると、Oral, Posterとも活発な討論が行われている印象を受け、世界各国の研究者の興味深い発表を聞くことができました。
今回私は一般演題の口頭発表として、“Potential of ceramide nanoliposomes as necroptosis-inducing chemotherapeutic reagents in ovarian cancer”(卵巣がんにおけるセラミドナノリポソーム製剤のネクロプトーシスを誘導する化学療法剤としての可能性)のタイトルで講演をさせていただきました。私にとって初めての国際学会発表であり、さらに英語を使ってやりとりしなければならないということでとても緊張しました。自身の語学能力をもっと磨き、より有意義な学会発表や円滑に外国の方と交流できるようになりたいと改めて感じることができました。また、日本人と話し合うことだけでは思いつかなかった疑問やアイデアを得られた為、自分の研究活動に対して新たな着眼点を見つけることができました。さらに、最近のトピックスである"The roles, functions and therapeutic implications of sphingolipids in acute myelogenous leukemia"(急性骨髄性白血病におけるスフィンゴ脂質の役割、機能および治療上の意義)など、世界の第一人者による数々の講演を拝聴し、今後の研究に大いに役立つ知見を得ることができました。ほかにも、ポスターセッションでは若手や中堅の研究者によって最新の研究データが発表され、熱い討論が行われました。
学会最終日の夜には、参加者全員は笑顔で夕食ダンスパーティーを開きました。皆さんの踊っている姿に感動し、周りの沸き立つ雰囲気に夢中になった私は、「これこそがアメリカの魅力だ」と思い、大変楽しい時間を過ごすことが出来ました。
総じて言えば、本学会への参加により、盛大なレセプション、会場での活気ある雰囲気、発表時の英語でのディスカッション等、国際学会でしか味わえない数多くの貴重な経験を積むことができ、私の価値観を大きく広げることに繋がりました。また、世界各国の最新の知見を得ることや、私自身の研究内容に対する助言を頂くこともでき、今後の研究生活の糧となりました。
開催期間:2017年3月15日~18日
橋本 千明
3月15日から18日までの4日間、64th SRI(Society for Reproductive Investigation)Annual Scientific Meetingに参加させていただきました。
今年はアメリカのオーランドで開催されました。15日からの学会のために、日本を3月14日に出発する予定でしたが、当日午前3時に「経由地であるワシントンD.C‐オーランド便が運休」とのメールが…予定通り成田空港へは到着しましたが、アメリカで記録的大雪とのことで成田‐ワシントンD.Cも遅延、ワシントンからオーランドの便も軒並み運休しており、ワシントンの空港で12時間過ごしたのち、午前1時くらいにオーランドに到着するのが最善とのこと。英語力に不安のある私は、ワシントンで万が一その便も欠航になったら…と悩み、結局サンフランシスコ経由の便に変更してもらい、予定より7時間ほど遅れてなんとかオーランドに到着することができました。菅原先生も同じ便に変更となったので、とても心強かったです。
オーランドといえば暖かい、半袖!と思っていましたが、その寒波の影響で驚くほど寒く、現地の方はダウンなど着ており、Tシャツばかり持っていったことを後悔しました。今年1番寒いくらいの気温だったようです。そしてまた、アメリカと言えば肉!と考え、21時半からトマホークステーキを食べに行ったり、到着日の23時頃からハンバーガーを食べたりと、普段以上に活発な食生活を送ることができました。
学会には当教室からは、菅原準一先生、齋藤昌利先生、櫻田尚子先生、湊敬廣先生、渋谷祐介先生、和形麻衣子先生、越智さん、ドンさん、私と9名で参加しました。テーマはやはり周産期、生殖医療関連が中心で、今年も悪性腫瘍関連は1割程度でした。毎日ポスターセッションがありましたが、100題以上あるうち腫瘍は3題/日でした。ポスター発表のプレゼンターにIN-TRAININGというカードを掲げた方は今年も多かった印象ですが、IN-TRAININGとある場合には、評価者が4分程度の質疑応答を行っているということを今回初めて知りました。湊先生はIN-TRAININGで申し込まれていましたが、1人の方と10分以上の質疑応答をされており、一緒に聞いているだけでも勉強になりました。和形先生は口頭での発表でしたが、英語での質問にしっかりと受け答えされており、私もこうなれるように英語を頑張ろう!とまた決意を新たにしました。
その他、腫瘍のいくつかのセッションに参加してきました。私の研究分野に通じる子宮内膜癌のホルモン治療についての発表もありましたが、乳癌や前立腺癌のホルモン治療をスマートフォン、子宮内膜癌のホルモン治療を黒電話に例えており、他の分野と比較してまだ子宮内膜癌の治療の確立が遅れている現状と今後の展望をとてもわかりやすく学ぶことができました。また、PARP阻害薬やBRCAについての発表は今年も多く、現在行われている治験への理解をより深めることができたと思います。
また16日には、日本から参加されている他大学(東京大学、名古屋大学)の先生方と一緒に食事をする機会がありました。現在行われている研究など、同世代の先生方からも直接伺うことができ、刺激になりました。
最後に、今回学会への参加・発表の機会を与えてくださった八重樫教授をはじめ、医局の先生方に感謝申し上げます。
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留学期間:2023年7月26日~8月3日
餅井 規吉
私は齋藤昌利教授の指導のもと、7月26日から8月3日までの9日間の予定で、西オーストラリア大学での羊研究のお手伝いや見学をさせていただきました。
内容としては人工胎盤の手術、胎仔エコー、羊水穿刺などを見学させていただきました。研究のお手伝いとしては羊の運搬や羊水穿刺、胎仔エコーをさせていただきました。医学研究、動物実験に実際に参加し貴重な体験を通し、今秋から始まる自分の研究へのモチベーション向上にもなりました。
また、初めて行うことが多く慣れない環境の中、現地のスタッフや東北大学から一緒に手伝いに来た仲間に優しく教えてもらいながら楽しく研究に参加することができました。また、研究者の方と話す機会があり、研究に対する姿勢、研究の進め方や考え方、どのように論文にするかなどを具体例を交えて分かりやすく教えていただきました。
最後に私事ではありますが、オーストラリアからの帰国の際にCOVID19 PCRが陽性となり予定通りの帰国ができませんでした。しかし、多くの方に支援していただき、無事に帰国することができました。このように多くの支えがあり今回の短期留学を成し遂げることができました。今回の留学経験を活かし、今後の自分の研究や臨床に励みたいです。
留学期間:2022年6月中旬~8月
齊藤 裕也(大学院 周産期医学分野)
2022年6月中旬~8月にかけて西オーストラリア州パースに滞在し、西オーストラリア大学(UWA)でのヒツジ胎児を用いた研究に参加させて頂きました。当科のヒツジ実験室といえば齋藤昌利教授のもと、熊谷祐作先生、高橋司先生夫妻(現在留学中)が在籍しております。西オーストラリア大学との研究協力は毎年行われていたものですが、コロナ禍のため3年間再開できずにいたもので、私としては今回が初めての渡濠でした。パースとUWAについては上記の先生方がこれまでも紹介してくださっておりますので、私は簡潔にどのような生活をしていたのかを述べさせていただきたいと思います。
新型コロナウィルス感染症の影響がまだまだ続く中、日本とパースを結ぶ直行便は運休となったままであり、シンガポール経由での渡濠となりました。仙台出発時から数えると約24時間近い移動で、久々の海外、さらには初めての土地ということもあり、着いて早々体調を崩してしまいました。スタートに躓いてしまった感は否めませんが、幸いコロナではなく、数日で体調も回復できました。そこからは改めて「積極的に何でも挑戦しよう」と心に決め、何をするにも新鮮に感じる日々はとても楽しく、有意義な時間を過ごさせて頂きました。
シープシーズンと呼ばれるこの約6週間は土日関係なく毎日実験がおこなわれ、文字通り休みなく生活していました。内容としてはヒツジ胎児へのカテーテル留置術、ステロイド投与、人工胎盤手術や超音波による胎児計測がメインでした。大型動物を取り扱う実験施設や機器の充実もさることながら、日本とは比にならないほどのヒツジの数に圧倒されたことは言うまでもありません。国を跨いででも、オーストラリアで実験を行う価値を感じた次第です。また、現地の産婦人科医師であり大学院生のDr. Shaunと一緒に実験を行う機会もありました。年齢も近く、同じ大学院生ということもあって、オーストラリアの産婦人科医療についてなども話ができたことは非常に興味深いことでした。英語でコミュニケーションをとりながら手技を行うことは初めてでしたが、お互いにやりたいことは直感的に理解でき、国境を越えても産婦人科医として考えることは似ていると感じることができました。実験を進めていく中で上手くいかずに落ち込むことや、疲れが溜まったりすることもあり、そんな時こそ“Respect”の精神の大切さを再認識させられ、言語や文化が違っても良好な人間関係を保つには必要なことだと身をもって知ることができました。
コロナ禍ということもあり、実験後に積極的に街に繰り出す、とは行きませんでした。驚いたことに、パースでは公共交通機関等でのマスク着用は義務つけられているものの、街中ではマスクをしている人は極少数でした。世界有数の美しい街と称されるパースは評判通りとても美しく、気候も良いためキングスパークを散歩したり、宿の周辺をジョギングしたりするだけでもとても心地の良い場所でした。夕飯は宿で自炊をすることがほとんどで、メインはなんといってもオーストラリアビーフのステーキ。日本では見たことがないような塊肉を買い、上手に焼けるか日々試行錯誤するのも非常に楽しいものでした。
ラボにて(高橋先生&熊谷先生と)
Dr. Shaunと
マットさん&餅井先生と
今回は短期留学という形で海外での研究生活を体験させて頂きました。今まで留学という響きに憧れこそあれど具体的なイメージが何もない状態でしたが、いつかは留学して、自分のプロトコールを持って研究してみたいと考えるようになりました。もちろん英語の能力や留学に関わる必要条件など、まだまだ満たしていないものが多数あるのは理解しているつもりです。今回の滞在を通じて、日本語の学会発表や論文で終わらせるのではなく、英語で発表し世界と議論しなければもったいないと感じるようになりました。日本は便利な国ですし、オーストラリアにいても“技術の日本”と現地の方からよく言われました。しかし日本でいくら優れた研究をしていても世界へ示していかなければその先はつながらないと思いますし、昨今の情勢を見ていると日本はこれからも“技術の日本”でいられるのか、と不安にすら感じます。このヒツジ研究を通して、日本から世界へ発信していく一人になれるよう、日々精進していきたい。そう感じさせられた濠生活でした。
最後になりますがコロナ禍のお忙しい中、快く送り出してくださった八重樫教授をはじめとする医局員の先生方、渡濠を支えてくださった秘書の皆様やUWAのスタッフの皆様には大変感謝しております。この経験を活かし、さらにステップアップした姿をお見せできるよう頑張っていきたいと思います。
キングスパークから見た
パース市街地の夜景
留学期間:2021年-
濱田 裕貴(産婦人科)
なぜ留学に行こうと思ったのか?基礎研究に興味があり医学部に入るも、分娩の魅力に取りつかれ産婦人科医として歩み始めた。野戦病院で臨床を叩込み、大学病院での先端医療に触れ、現代医療の限界を感じた。産科医にできることは、安全な児娩出と新生児医療への架橋のみ。「周産期医学の発展には基礎研究が不可欠」という一種の使命感を抱き大学院に進み研究を始めた。学位取得後も研究に打込める環境を求め、行き着いた答えが海外研究留学。いわゆるコネは無かったが、大学院時代の研究成果を発表した国際学会で、とある研究者と知り合い、運よく留学先が決まった。
留学先のカナダは移民に優しい国で、申請にかかる一切の雑用を行う「ビザ申請代行業」なるものが存在し、多忙な臨床業務を抱える身としては利用しない手はない。春に単身渡加、生活基盤を整え、夏休みに家族を迎え入れた。実はコーヒー好きなカナダ人、某大手コーヒー店の国民一人当たりの店舗数が、実は世界1位。宮城県で例えるなら、日本では大崎市(13万人)に1店舗あるのに対し、カナダでは亘理町(3.5万人)規模にも1店舗存在することになる。雪国ながらスポーツは盛んで、夏は野球(MLB:Blue Jays図1)やテニス(ATP1000:Canadian open)、冬はバスケットボール(NBA:Raptors)とアイスホッケー(NHL:Maple Leafs)など、年中世界一流のスポーツを楽しめる。春はメープルシロップ狩り、夏はキャンプ(図2)、秋は果物狩り、冬はスケート(図3)と、アウトドアも通年で充実。留学中の身分ゆえ経済的な余裕は無いものの、仕事は9時-5時/平日のため家族との時間が多く、すごく満たされた生活であった。
Blue Jays ホームスタジアムで観る
本場の野球は鳥肌もの
キャンプには何度も行き、
だいぶこなれた雰囲気
少し舵を切り、研究生活について述べる事としよう。留学先はトロント大学医学部生理学教室Stephen Matthewsラボ(図4)。総勢10名の大きくないラボだが、多民族国家カナダを象徴するような民族構成で、欧州、アジア、南米出身の研究者が在籍し、互いに敬い、思いやり、程よい距離感で接している。ラボの研究テーマは、妊娠中のステロイド暴露が胎児の脳発達に与える影響。大学院の時との一番の違いは、研究員各々が自分主導のプロジェクトを持ち、高い士気を保ちながら研究成果を挙げていることである。これには2つのカラクリがある。1つ目は「自主性」。研究の立案、実験、解析、投稿に至る課程を自分で考える。テーマは与えられるより、自分で導き出した(実はボスに導かれている?)方が、研究に対するモチベーションが遥かに高い。2つ目は「報酬」である。研究員は大学生であっても給与が支払われる。その背景には潤沢な研究資金がある。研究所主催のチャリティーイベントやプロスポーツ選手からの多額の寄附などが、研究助成金の資金源となっている。
留学最大の収穫は、ディスカッション能力の飛躍的な向上であろう。ラボには「自分のデスク」は存在せず、共用の長机が一つあるだけ。なんとなくの定位置こそあるものの、仕切りが無いため開放的で、日常的に雑談交じりの討論が行われている。ミーティングも頻繁にあり、こうした日々の討論を積み重ねが、いざ学会での受答えに活きる。学会参加が多いのも留学ならでは。留学中3年間で国際学会2回、国内学会2回、いずれも口頭発表の機会に恵まれた。欧米人はプレゼンが上手いと称されるが、努力の上に成り立っていることを痛感する。いざ口頭発表に選出されると、毎週のように発表の練習が行われる。スライド構成のみならず、配色、配置、フレーズ、アニメーションなど、事細かにダメ出しが入る。それが本番での良い発表につながる。幸いにも国際DOHaD学会で若手優秀口頭発表賞を受賞した(図5)。
無料で開放される屋外スケート場
毎年クリスマスには
ラボの皆でディナーを
公私ともに充実した留学生活は、コロナ禍により突然の終焉を迎える。大学全体がロックダウンされ研究活動は凍結。日本行きの飛行機も2週間以内の欠航が決まり、慌てて帰国の途に就いた。ラボで送別会が出来なかったことが悔やまれる。しかしコロナで良いこともある。リモートワークが一般的になり、日本からでもリモートで研究を進め、論文投稿まで漕ぎ着けた。今でもラボのWebミーティングに参加している。
帰国後は、周産期の臨床現場に身を置きつつ、日常臨床の疑問を解決する研究を行うのが理想だが、日々の臨床・研究業務に埋もれぬよう必死に働いているのが現実だ。支援いただいた多くの方々に感謝し、後輩に研究や留学の支援をしつつ、産婦人科医学の発展に少しでも貢献したい。
国際DOHaD学会2019で
若手優秀口頭発表を受賞
教室員会だより11月発行の『留学先で見たこと・聞いたこと』でも掲載されました。