HOME>留学報告

留学報告

2015年ネパール地震支援報告

山本 嘉昭

 2015年4月25日、ネパールのカトマンズ近郊を震源とするマグニチュード7.9の地震があり、調査および医療支援のため、私はメガバンク機構のフェローシップとして現地に行かせていただきました。また、中西部の僻地ルクム郡チョウジャリ村のNGO病院での医療活動や、医療の届かない村々の検診を通じて、現地の医療事情や生活状態を学ばせていただきましたので報告します。

 ネパールは2008年に王国制度から民主主義国家に移行しましたが、国内のほとんどが山岳地で鉄道もなく、まだ道路、電気、水道などのインフラが十分に整備されていません。人口は約3000万人で、国民の70%以上は農業で生計を立てています。現在はアジアで最も貧困率が高い国と言われています。

 地震の被害は、死者が8700人以上、けが人2万人、倒壊した住宅が77万個、失われた教室が3万個に及びます。被害総額は5000億円と 推測されており、ネパールの国家予算の2倍です。私は、地震から一ヶ月経ち、交通網が緩和するのを待ち訪れました。首都カトマンズでは、余震もあり、多くの人が避難したため、人口は半減し交通渋滞がなくなり静かな町になっていました。多くの建物の壁にひびが入りましたが、倒壊した建物は古い歴史建造物の寺院や、粗末な家がほとんどで、ゆとりのある商店や家は被害も少なく住める状態でした。郊外の町でも、商店街の建物は壊れず、農家の多くが倒壊していました。

  パースの朝焼け   パースの朝焼け  
  ダルバート広場の寺院と避難テント   バクタプールの古い寺院や町並み  

 

 初日に、被害の大きかったバクタプール地区を訪れ、寺院や集合住宅の崩壊を見て回りました。NGOが布団の代わりになるスポンジマットを配っていたり、海外の軍隊が撤去作業を行っていました。このあたりの建物には、四隅の柱に鉄筋が入っておらず、壁を支えるレンガの間はセメントでなく 土だけで、地震に弱い構造でした。人々は壊れたレンガを再利用のために手作業で集めておられ、貧困経済の現実を垣間見ました。

  パースの朝焼け   パースの朝焼け  
  バネパの倒壊した農家   トタンでできた、デュルケルの仮設住宅  

 


バネパでの健康相談(著者)
 地震から二ヶ月後、カトマンズから車で2時間南へ走り、バネパと言う町を訪れ、倒壊した農家や仮設住宅を見て、住民の方の健康相談をしてきました。心配された熱帯感染症は、まだほとんど聞きませんでした。
怪我や死亡された方の多くは、壊れた家でレンガや石の下敷きになられました。しかし、地震発生は午後3時頃で、多くの方が農作業のため屋外に おられ、幸いでした。また台所の薪の火も落ちており火災がほとんどなく、倒壊した学校には休日で児童がおらず、被害者は最小限で済んだものと思われました。警察や軍隊はもちろん活動しましたが、貧しい国なので隊員や機材が少なく、対応がおくれました。このため、中国、インドの軍隊や国際 NGOなどの救助活動や食料、水、テントの支給などは、大変喜ばれました。


チョウジャリ病院の助産師外来
 私は、2012年からネパール中西部のチョウジャリ病院でボランティア医師をしています。クリスチャン職員が多いこのNGO病院に、昨年は4ヶ月、今年も2ヶ月間滞在し、病院スタッフと兄弟のように共に祈り、共に働き、ネパールの周産期、僻地医療の改善を願って活動しています。今回の滞在中は、国家が大きく打撃を受けたにもかかわらず、わき上がってきた現地若者たちの相互援助の気概を共有してきました。昨年から始めた「病院を飛び出した検診活動」や、若い医師への手術の指導、諸検査の診断向上、早産児の予防、病院施設やシステムの改善などを目指しています。国外キリスト教団体からの経済的援助に感謝して、日本および多国籍の医療者と共に働いています。自分自身も、ネパールの患者さんや若手医師たちから、小児科や熱帯医学の実地臨床を教えてもらっています。


チョウジャリ病院から徒歩5時間の
カラガオン村での妊婦健診の風景
 電気は自家発電でつくり、資金の乏しい中を輸送困難な陸路を使い医療品を運びます。田舎の困難な生活を強いられるスタッフは「貧しい人々に、命を救う医療を届けたい」と言う理念を尊び、日本と比較にならない過酷な労働条件をこなしながら、チームワークを育てています。地域医療の一番大きな課題は医療者不足であり、先進国と共通しています。貧しさ故に治療をあきらめる患者さんや、実際の生活苦を現実のものとして見る機会を通じて、貧困世界を生身で体験していくと、「見て見ぬふり」ができなくなります。しかも「東北震災で生まれた絆」と同じ人間関係、分け合う愛情をしばしば見つけます。

 

 

 

 八重樫院長始め医局の先生方には、私の身勝手な国際協力活動に賛同していただき、また今回の震災支援に際しても、快く送り出して下さり、この場を借りて深く御礼申しあげます。