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留学報告

西オーストラリア大学短期留学記3

齋藤 昌利

今年も6月30日から7月22日までの約3週間、かつての留学先である西オーストラリア大学 School of Women’s and Infants’ Healthへ短期留学をし、妊娠ヒツジを使った多施設共同胎児生理学研究に参加してきました。

かつての留学期間を通じて、今回で6回目の研究参加となりますが、今回は、周産母子センターに勤務する傍ら、東北大学においても妊娠ヒツジ実験チームの一員である新生児科の臼田治夫先生と共に参加してきました。
今回の参加目的は大きく分けて2つありました。1つは日本で先行実施している人工胎盤実験モデルをオーストラリアに持ち込み、同実験系を立ち上げ、かつ結果を得ることです。現在、西オーストラリア大学には、以前この「シープシーズン」に参加した経験のある新生児科の三浦雄一郎先生が留学しています。彼が中心となり西オーストラリア大学で人工胎盤の実験系を立ち上げ、研究費獲得に向けて日々がんばっているところです。この研究費獲得に向けて、オーストラリアの地でこの実験系を立ち上げ、成果を出す、それが今回の渡豪の大きな目的でもありました。

初めての土地で、初めての実験器具、初めての実験系という「ハード」な条件でしたが、数々のトラブルをソートしながら予想以上の成果をあげることができました。この成果の裏には、西オーストラリア大学のスタッフや、三浦先生、臼田先生の想像以上の努力があり、改めてチーム全員で困難に立ち向かうすばらしさを知り、その充実感に酔いしれている所です。

  パースの朝焼け   パースの朝焼け  
  臼田先生 採血風景   三浦先生と臼田先生 ヒツジの毛刈り  

 

パースの朝焼け
カテーテル手術風景
もう一つの目的は、より週数の若い胎仔にカテーテル留置を行い、子宮内炎症がどの組織や器官からスタートし、どのように全身性に波及していくかを知る実験系を確立することでした。この週数の若い実験系は昨年にパイロットスタディーとして数例を試行し、錯誤をした上で内容を考えた実験です。具体的には妊娠90日(ヒツジの妊娠満期が150日なので、全妊娠期間中の60%相当=ヒトでの24週相当)に胎仔の血管、気管、羊水腔にそれぞれカテーテルを留置し、そのカテーテルを介して検体を定時的に採取する実験系です。通常、ヒツジ胎仔にカテーテルを留置する手術は全世界的に妊娠100〜110日前後に行うことが一般的です。今回の実験系では、胎仔は術後4日目にAutopsyに供されますが、その際の体重が約700〜800g程度です。
つまり、非常に未熟な胎仔の血管や気管組織を損なわないように細心の注意を払って露出&カテーテル挿入をしなければならず、かなり精神的に集中を強いられる「きつい」手術でした。しかしながら、時には楽しく、時には真剣にプロトコールをこなし、こちらの実験系も1例の胎仔死亡や予期せぬ子宮内感染などもなく完遂することができました。

一緒に渡豪した臼田先生も当初はオーストラリアの英語や文化の違いにやや面食らっているところはありましたが、徐々に環境にも仕事にも適応し、時にはオージービールやワインを嗜みながら、学生のような合宿生活を楽しみ、充実した3週間を過ごしてくれたと思います。

パースの朝焼け
カテーテル手術チームの面々
毎年、この短期留学を羨ましがられますが、約3週間の間、休みは1日たりともありませんでした。例年の如くヒツジを捕まえ、手術台に乗せるという肉体労働に勤しみますが、年々自分の体力が低下していることを自覚し残念な気持ちも若干ありますが、非常に充実した3週間でした。
最後になりますが、忙しいなか快く送り出してくれた八重樫先生を始め、医局の先生方、また周母の先生方には感謝しています。また、物心両面において多大なるサポートを頂いた松田直先生にも深謝致します。
この経験を今後の臨床、研究に還元できるようにさらに精進していきたいと思います。