HOME>留学報告
留学報告
フランス内視鏡留学報告
志賀 尚美

Auvernge大学前にて
八重樫教授のご高配により、2011年12月1日より2012年1月31日まで、フランスのAuvergne地方Clermont-Ferrand市のAuvergne大学医学部付属病院に内視鏡手術とdiploma取得のため留学をさせていただきました。
Auvergne地方Clermont-Ferrand市はパリから約420km、特急電車で約3時間半、人口約14万人の小さな街です。“街が全体的に暗い感じがする”、というと地元の人たちは怒るらしいのですが、本当に何となく街全体の色調が黒ずんでいます。象徴的なのは、街の中心にあるノートルダム・ド・ラソンプシオン大聖堂で、街の中でひときわ高く、ひときわ真っ黒です。なぜこんなに黒いのかというと、Clermont-Ferrand市からすぐの場所に、現在は休火山になった火山群にあり、その火山から採ってきた石で教会や家を建てたからだそうです。おもしろいですね。また、Clermont-Ferrand市はあの有名な“ミシュランガイドブック”を作成しているミシュラン社の本拠地です。Clermont-Ferrand市にいる、というとミシュランで働いているの?と必ず聞かれます。日本で言う、豊田市=TOYOTAのような感じでしょうか。さらに、哲学者であり数学者であったパスカルの生まれ故郷としても有名です。

27th Edition CICE of European University
Diploma of Operative Endoscopyに参加して
今回の留学の目的は2つで、1つは婦人科内視鏡手術で有名なAuvergne大学医学部付属病院の手術を見学すること、もう1つはAuvergne大学医学部に併設されているClermont-Ferrand International Center of Endoscopic Surgery (通称CICE)で開設しているEuropean University Diploma For Surgical Endoscopy In Gynecologyという内視鏡の研修とそれに伴うDiplomaの取得です。
Auvergne大学医学部付属病院の産婦人科は単独の診療施設を持っており、2010年に新設されたばかりで大変綺麗です。婦人科手術のためだけに手術室が7室あり、常時4〜6室並列で主に内視鏡手術が行われています。また残りの1室は朝から夕方までD&Cか、全身麻酔が必要な採卵術が行われています。内視鏡手術の適応は付属器摘出術や卵巣腫瘍核出術から、広汎子宮全摘術、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術まで、ほぼすべての婦人科手術を網羅しています。開腹するのは、進行卵巣癌や進行子宮体癌のみです。執刀は3人の教授と4〜5人のスタッフが行い、10人程度のレジデントと海外からの研修医師で助手を行います。手術見学はだいたい夕方には終わるので、その後Auvergne大学医学部の脇にあるCICEの施設で内視鏡の自主練習をします。内容は鳥の脚を使った腹腔内、腹腔外縫合術の練習、シミュレーション機器を使った練習、そしてたまに豚を使った実践練習です。
海外からの研修医師は私の研修期間内は10人(イタリア2人、ポルトガル2人、チリ2人、トルコ1人、ロシア1人、カザフスタン1人、日本1人)でした。年齢層は様々で、研修医から40代の経験豊かな先生までいました。毎日一緒に手術を見学し、内視鏡の練習をし、ディスカッションしながらご飯を食べ、異国に来たもの同士、寂しさを紛らわしながら過ごしました。
|
|
目的の2つめである、European University Diploma For Surgical Endoscopy In Gynecologyという内視鏡の研修期間は2回に別れており、1回目は2011年12月12日から16日まで、2回目は2012年1月9日から13日まででした。参加者は総勢101名、日本、シンガポール、ベトナム、ドバイ、インド、ロシア、ヨーロッパ各国、と世界中から来ていました。授業は座学と実習の組み合わせでした。座学は内視鏡の基礎から、腹腔鏡下広汎子宮全摘術のやり方まで幅広く、かつフランス語の英語同時通訳をヘッドフォンで聞きながらだったので、正直とても疲れました。しかし、ここまで幅広く、かつ内視鏡のことだけを朝から晩まで勉強したことはなかったので大変よい経験になりました。実習は豚や鳥を使った練習でしたが、2人に1匹の割り当てだったのでたくさん練習できました。最終日に筆記試験があり研修は終了しました。

クリスマスのイルミネーションに
彩られた街の風景
Diplomaは、この試験成績と内視鏡に関する論文1本(4月までに提出)の評価で決まるそうなので、これから心して論文を書こうと思います。。。
留学中は、松崎先生を始め、同じ海外研修医師の先生や病院の先生に助けてもらいながら何とか生活し、2ヶ月間の研修を無事に終えることができました。研修も今後日本で診療を行う上で糧になることをたくさん吸収することができました。
このような貴重な機会を与えてくださった八重樫教授、そして医局の先生方に感謝いたします。本当にありがとうございました。