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西オーストラリア大学留学記

齋藤 昌利
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エミュー横断注意!

みなさん、こんにちは。僕は現在、西オーストラリア州のパースというところにある西オーストラリア大学で勉強しています。西オーストラリア州はオーストラリア大陸の「左側」3分の1を占め、州全体で約200万人の人々が生活しています。そのうち、州都であるこのパースには約150万人が暮らしています。西オーストラリア州だけで日本の約7倍の面積があるにもかかわらず、人口は日本全体の約60分の1。つまり、簡単に計算すると日本の人口密度の約420分の1ということになります。、、、、みなさんが今想像したとおりこのパースの街から車を1時間ほど走らせると、テレビや映画でしかお目にかかったことのないような広大な平原に、野生のカンガルー、エミューなどが優雅に暮らしており、さらに広大な牧場に羊や馬や牛が放牧されています。といっても僕が生活しているパースの街は非常に近代的な街で、市街地には高層ビル群、無料の巡回バスが整備されており、パース近郊と市街地を結ぶ市営のバス、鉄道、フェリーもパスカード一枚で乗り降りが出来ように整備されています。街のあちこちにはゴルフ場と見間違うほどに綺麗に整備された芝生の公園が点在し、その公園には無料で自由に使うことの出来るバーベキューコンロが設置されています。

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パースの街
パースは雑誌やテレビで「世界一住みやすい街」「世界一美しい街」とも紹介される街で、治安もよく、人口や緑が多い街の雰囲気は仙台に似ており非常に暮らしやすい街です。冬は雨季になるためいくぶん気温は下がりますが、それでも最低気温は10度を下回ることはほとんどありません。ちなみに氷点下を記録したのは長い観測史上でたった2回しかないそうです。冬以外は乾季になるため雲ひとつない快晴が続きます。高名な宇宙飛行士が「光の街」とパースを表現したように晴天率が非常に高い街で、1年のうち約300日晴れていると言われています。といっても日本のような蒸し暑い天気ではなく、木陰にいれば少し肌寒いと感じるほどカラッと乾燥しています。

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実験風景

西オーストラリア大学はヘリコバクターピロリ菌の研究でノーベル医学生理学賞受賞者がでるほど研究が非常に盛んな大学です。大学敷地は自転車が欲しくなるほど広く、スワン川という川を挟んで市街地をのぞむ非常に風光明媚な場所にあります。僕はこの大学敷地内にある動物実験施設と市内にある産婦人科専門病院を中心に行ったり来たりしながら日々働いています。現在の僕の仕事は、妊娠羊を用いた胎児生理学の研究です。具体的には、大腸菌やウレアプラズマという日常診療でも比較的その名前を耳にすることが多い病原微生物を妊娠している子宮に投与し、人工的に子宮内炎症を再現します。その子宮の中の炎症が、胎仔にどのような影響を与えているのか、ということが大きな研究テーマの一つです。炎症の中にいた胎仔の肺は人工換気によってどのように変化するのか? 炎症は胎仔の脳組織にどのような影響を与えるのか? どうやって胎仔は炎症があることを知るのか? そういった研究テーマを病理学的にあるいは免疫学的に研究しています。主に妊娠羊が入手できる冬に負荷実験や手術が行われ、春から秋にかけて研究室でラボワークをする、というのが一連の流れになっています。しかしながらここはオーストラリア、研究に使用する羊の数は年間300頭に及び、まずは羊と「仲良し」になることが研究のスタートです。僕が所属する羊研究グループは、ニュージーランド人の科学者、ギリシャ人の科学者、オーストラリア人の獣医、オーストラリア人の産婦人科医、小児科医などがいわば「ごちゃ混ぜ」になってチームを形成しています。負荷実験や手術の時期にはアメリカにいるインド人の小児科医、オランダにいるスイス人の研究者などとコラボレーションをし、それぞれの国の話をしながら楽しい雰囲気で実験や手術を朝から晩まで行っています。研究が一区切りするとチームみんなでレストランやバーに集まって食事をしたりお酒を飲んだりしてお互いの苦労をねぎらう、というのがこちらの習慣です。

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羊の手術

職場できちんと仕事を出来るのかということも留学前の大きな心配要素の一つでしたが、もう一つの、というか最大の心配はやはり言葉の問題でした。僕は「医局の底辺」と言われるほど英語が苦手でしたが、こちらではどうしても英語を使わなければいけません。自分の文法が間違っていようが、発音が間違っていようが、時相がずれていようが、何とか伝えなければいけないし、なんとか理解しなければいけません。渡豪当初はテレビをつけても英語、買い物に行っても英語でうんざりでしたが、「慣れ」とは恐ろしいもので、今ではめちゃくちゃな英語を駆使し、「伝わらないのは俺がいけないんじゃなくて、相手が悪い」と自分に言い聞かせてなんとか暮らしています。英語が苦手な方は勇気を持ってください。医局の底辺であったこの僕がなんとか英語で生活しているのですから!

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職場のみんなと

 あまり大きな声では言えませんが、日本にいるときには僕は「臨床がそれなりに出来ればそれでいい」と思っていたところがありました。しかしながら留学により、視野を広げる、研究の第一線の現場を見る、全く違う分野の人間と一緒になって何かを成し遂げる、そういった素晴らしい経験を積むことができると実感しています。この経験は自分自身のこれからの臨床のみならず人生にもに大きく影響するものと思っています。  まさに産婦人科医不足が叫ばれる時代に、温かく送り出してくださった教授はじめ、医局の先生方にはとても感謝しています。できるだけ多くのことを経験、吸収して日本に戻りたいと思っています。 学生さん、研修医の皆さん、機会があればパースに遊びに来てください。僕の「めちゃくちゃな英語!?」でガイドいたします。


パースより  齋藤昌利