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留学報告

シアトル留学記

豊島 将文
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ラボのメンバー

 私は平成20年7月より米国シアトル市のフレッドハッチンソン癌研究所に留学させて頂いています。こちらに来てちょうど一年が経過しましたのでシアトルでの一年を振り返ってみたいと思います。

生活面では子供を通じて多くの知り合いが出来ました。アメリカでは学校の送り迎えを始め子供と一緒にいる時間が長いので、3人の子供の世話は大変な重労働です。自分が研修医のときに長男が最初にしゃべった2語が「パパ、いない」だったのですが、こちらでは3人の子供とよく遊ぶようになりました。またこちらには英語を母国語としない子供のために英語補助クラスが併設されている小学校があり、そのような学校には日本人が比較的多く集まっています。さらにシアトルは日本語補習校もあるので家族ぐるみで日本人と付き合う機会がとても多くなります。そのように知り合った人たちとハロウィーン・感謝祭・クリスマスなどの行事を楽しむことが出来ました。ハロウィーンではショッピングモールでお菓子を配るので子供と一緒に列に並び、感謝祭ではこちらの人に習ってターキーの丸焼きを作りました。

英語については、一年経っても思ったより英語は上達せずにがっかりしています。むしろ周りが自分の下手な英語に慣れただけのようです。大人の脳では、ただ生活するだけでなくキチンと「英語の勉強」をしないといけないのかもしれません。子供達は文法的には間違っていても臆することなくドンドン英語で話をします。「言葉はこうやって覚えていくんだなあ」と感心する事しきりです。彼らは日本から来た当初は英語のビデオを見たがらなかったのですが、最近では普通に英語のテレビ番組や映画を見ています(どの位理解しているのか分かりませんが・・・)。

アメリカ人はTシャツの英語を読む。
外国人が漢字の書かれたTシャツを着てたり、漢字のタトゥーをしているの見ると、「それ、意味分かってる??」と思うことがよくあります。自分の子供の幼稚園の園長先生(40代の女性)が、うなじに「恵」というタトゥーをしているのを発見したときには「この幼稚園本当に大丈夫か?」と心配になりました。実は同じように、アメリカ人はTシャツにプリントされている英語をよく読んでいます。私は今まで洋服にプリントされている英語なんかほとんど気にしたことがありませんでした。でもこちらではよくTシャツの英語を読まれて、それが話の種になっています。最近では服を買うときに英語の意味をちゃんとチェックしてから買うようになりました。

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学会での発表

仕事に関してはトラブル続きで大変な思いをしましたが、一年経って少しずつ結果らしきものが出てきつつあるところです。研究は大きく以下の二つのテーマで行っています。実験ではマウスBリンパ腫と神経芽細胞腫を扱っているので、婦人科腫瘍とはちょっと離れてしまっていますが・・・・
@Eu-Myc mouseとWRN-mutant mouseの解析
AMycとsynthetic lethalityを持つ遺伝子のスクリーニングとその解析

@Eu-myc mouseはBリンパ球でのみMycが強発現するトランスジェニックマウスで、ヒトのB lymphomaのモデル動物としてよく使われています。一方、WRNは早老症を示す遺伝疾患ワーナー症候群の原因遺伝子でDNAの安定性に深く関わる分子なのですが、WRN単独のノックアウトマウスでは表現型を示さないことが分かっています。このラボでは以前に、in vitroの系においてWRN欠損細胞でMycを強制発現させると細胞に老化現象が起こることを報告しています。そこで二つのマウスを掛け合わせて、in vivoの系でMycによる癌化がWRN欠損によってどうなるかを調べるのがこの研究の目的です。

AMycは主要な癌遺伝子であり、婦人科癌をふくむ多くの癌で強発現しています。しかし正常組織でもMycは重要な働きがあり、治療のターゲットとするには問題点が多くありました。そこで直接Mycをターゲットにするのではなく、癌細胞でのみMycと合成致死作用を持つ分子を探し出し、これを癌治療のターゲットにしようとするのがこの研究の目的で鬆。一次から三次スクリーニングが終了し、3つの分子が治療標的として残りました。現在はMYCN増幅or非増幅の神経芽細胞腫細胞株を用いて、これらの分子について表現型の解析を行っているところです。

一年間大きな事故や病気もなく健康に過ごすことができました。アメリカ生活にもようやく慣れて仕事も楽しくなってきましたが、蓄えも順調に(!)減って来ています。限られた期間を思い切り楽しんでいきたいと思います。

 

7月の爽やかな太陽の下から
豊島 将文