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海外学会報告

ACOG報告

湊 純子

2019年5月2日から5月6日まで米国ナッシュビルで開催された米国産婦人科学会(ACOG:American College of Obstetricians and Gynecologists)のAnnual Meetingに参加させて頂きました。ナッシュビルは人口約60万人のテネシー州の州都で、カントリーミュージックをはじめとするアメリカ音楽の聖地といわれています。現在も中心街は生演奏のサウンドが一日中絶えることがないほどでした。ミュージックシティーセンターという数多くの音楽イベントも開催される施設が学会会場となりました。

1日目はオープニングセレモニーに出席し、続いてPresident’s Program Lectureを聴講しました。ACOGのPresidentが進行役で3人の演者を迎えて「母体死亡の予防」についてディスカッションを行っていました。日本でいうシンポジウムに近いですが、驚いたのはその発表スタイルです。ステージの真ん中で4人とも立派な椅子に座ったままリラックスした様子で講演とディスカッションを行っており、まるで「徹子の部屋」の収録を見ているようでした。

午後には、FellowとYoung Physicianが臨床問題についてクイズ形式で対戦するというユニークなセッションを聴講しました。2日目はACOG恒例のLunch conversationに参加しました。円卓にて1人の専門家を9人の参加者が囲んでディスカッションする形式です。私は「Successful Laparoscopic Entry」というテーマを選択し、まず専門家のレクチャーを聴き、Entryの手技や自施設での臨床経験についてディスカッションを行いました。米国ではBMI>40の患者で臍上の筋腫に対してもpulmer positionからentryして腹腔鏡手術を行うと聞いて驚きました。午後は私達のe-ポスターでの発表がありました。私は「肥満と高齢患者に対する子宮体癌リンパ節郭清の臨床的意義について」プレゼンテーションを行い、緊張しながらも無事に終えることができました。

夜はPAC partyに参加し、お酒を飲みながら交流を深め最後には若手医師も教授も皆一緒にディスコを楽しみました。3日目はConvocationというACOG Fellowの認証式に参加しました。グリーンのマントに身を包み誇らしげに歩くFellowの姿が印象的でした。3日間を通して、事前に登録したセミナーをいくつか聴講しました。米国では、9価の子宮頚癌ワクチンを接種し90%以上の子宮頚癌が予防可能になること、全ての卵巣癌患者に対してBRCA検査が保険適応であることなど日本との医療制度の違いを感じました。各セミナー終了後の質疑応答が非常に活発で、質問者は特に名乗ることもなく次々と質問していました。4日目はナッシュビルにあるヴァンダービルト大学病院を見学し、午後は観光を楽しみました。

ヴァンダービルト大学は大学創立のために多額の寄付をした実業家Vanderbilt氏に因んで名付けられた私立大学です。分娩は約4000件/年間、婦人科は専用の手術室を3室持っておりロボット手術をはじめ多くの手術が施行されていました。米国南部の中核病院であり、我々と同年代の若手医師が慌ただしくも生き生きと働いていました。

私がACOGに参加して印象的だったことは2つあります。1つ目は米国人のプレゼンテーション能力の高さです。オープニングセレモニーでのPresidentの講演はまるで大統領の演説を聞いているような人を惹きつけるプレゼンでした。各セミナーの講師、若いFellow達、さらにはレストランの店員、観光案内所のスタッフまで、堂々と大きな声で淀みなく、時にはユーモアを交えてプレゼンしていました。話の内容が理路整然としていたかまでは判断困難でしたが、自分達の話す内容に対して誇りと自信に満ち溢れていました。プレゼンに苦手意識を持っている私にとってとても衝撃的でした。2つ目は女性医師の活躍です。学会会場にいると女性医師が半分以上占めており、日本より多い印象でした。各セミナーの講師も女性の比率が高く、各分野の教授が自分達の功績や今後の展望について講演されていました。そして、今年のACOGのトップ(President)は女性でした。彼女は忙しい中、気さくに私達との写真撮影に応じねぎらいの言葉を掛け、2日目の夜には一緒にディスコを踊り、とてもチャーミングな方でした。また今回ACOGに参加した若手医師6名のうち私を含め3名が女性で、3名とも育児中でした。それぞれの環境で日々奮闘している彼女達と育児や仕事の悩みを共有することができ、今後の励みになりました。さらに今回一緒にACOGに参加された九州大学教授の加藤聖子先生と直接お話させて頂いたことも貴重な経験となりました。このように今回のACOG参加で、多くのVitality溢れる女性医師に出会うことができ、今後医師を続けていく上で大きな刺激となりました。

最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった日本産科婦人科学会、ACOG、東北大学産婦人科の皆様に心より感謝いたします。