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海外学会報告

SRI 65th Annual Scientific Meeting 参加報告

熊谷 祐作

3月6日から3月11日までカリフォルニア州サンディエゴで開かれましたSRI(Society for Reproductive Investigation)という学会に参加し、ポスター発表を経験させていただきました。

私の発表は、「Post-surgical maintenance of cardiac function in an ex vivo premature lamb model」と題して、人工胎盤に繋いだ胎仔の術後評価として胎仔循環評価を超音波にて行い、後負荷・後負荷上昇の原因と改善点について考察したものでした。私は大学院生として応募したため、2人の採点官にプレゼンテーションをする機会がありました。しかし、その採点官から研究内容に関する質問をしてもらえず、今回の発表に興味を持ってもらえたかについては実感を得られませんでした。採点官以外の方からは、プレゼンを求められる機会がそれなりにあり、また質問して下さる方々に恵まれ、研究の面白さを共有できた感がありましたが、興味を持ってもらえるようなプレゼンテーションを英語で行う難しさを強く実感しました。また、私が学生時代に病院実習でお世話になった宮崎大の先生方、宮崎大からロサンゼルスに留学し羊の低酸素実験をしている先生、慶応大で臨床研究している先生方と研究結果を共有し、交流をすることができました。

興味深かった演題を3つ掲載させていただきます。

・Multi-Parametric MRI in Early Pregnancy as a Possible Predictor of Ischemic Placental Disease.

UCLAからの発表です。妊娠高血圧腎症と胎児発育不全は、近年どちらも妊娠初期の胎盤形成不全に基づくplacental ischemic diseaseという概念でその病態を説明しようとしていますが、これをfunctional-MRIで胎盤血流を測定した研究です。結果によると、妊娠15-17週に最も顕著に胎盤血流(の中でもhigh placental blood flow (hPBF)率)が低下したため、15−17週にMRIを撮像すれば良いと示唆していました。当科の放射線診断科でもこのようなMRI撮像が今後できれば大変有意義だと感じました。

・IL-1 Receptor Antagonist Improves Trophoblast Invasion, Endothelial Development and ZIKV Sequelae in Offspring.

john Hopkins大学の発表です。他にもジカウイルスに関する発表はoral、poster共にたくさんありました。これはマウスを使った動物実験ですが、感染マウスではTrophoblast invasionやvimentin発現が低下し、神経行動学的テスト結果も悪化しますが,IL-1receptor antagonistを投与するとそれらが改善するため治療的効果を認めたというものです。

・Oral Steroids for Maturation of the Preterm Lung: Pharmacokinetic and Efficacy Data from a Sheep Model of Pregnancy.

私が所属する研究室と共同研究をしているにしオーストラリア大学のマット先生の発表ですが、母体への経口ステロイド投与で胎児の肺成熟を促進するという内容です。これが臨床で応用されれば、母体にリンデロンの筋注をせずに内服で済ますことができるため、投与の簡便さ、経済的にも大変理にかなっている研究発表でした。私もパースで手術手伝いやお母さん羊の口腔内投与を手伝わせていただいた実験の研究結果です。

夕方からはサンディエゴの飲食店へ繰り出し、クラフトビールやハンバーガー、Napaのワイン、イタリア料理、シュラスコを含むブラジル料理、スペイン料理、日本の居酒屋など楽しみました。日本居酒屋のお造りを含め、全て大変美味しかったです。同じ研究室でオーストラリアへ留学中の臼田先生にはたくさんご馳走になりました。

このような昼夜ともに素晴らしい経験をすることができ、今後の臨床、研究にも俄然意欲が湧く、初めての国際学会参加となりました。八重樫先生、研究室の上司で医局長の齋藤先生をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。