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海外学会報告
11th Biennial OVARIAN CANCER RESEARCH SYMPOSIUM参加報告
石橋 ますみ
2016年9月12日から2日間、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルで催された 11th Biennial OVARIAN CANCER RESEARCH SYMPOSIUM に参加してきました。
卵巣がん研究の第一人者が多数集まるシンポジウムで、「卵巣癌の診断」「発がんと進行のメカニズム」「卵巣癌の微小環境」「新規治療」の4つのテーマに沿って様々な講演を聞くことが出来ました。私はポスターで参加し、現在研究している卵巣癌のシスプラチン耐性を克服する新規分子標的について発表しました。
私は自分の研究テーマでもあるため、卵巣癌治療に関する演題やポスターを重点的にみてきましたが、全体を通じて感じたことは、シスプラチンは歴史に残る偉大な発見であり、いまだシスプラチンを凌駕する治療薬はない、ということでした。新規の分子標的治療に関する発表がたくさんありましたが、単独で使用するよりも従来から卵巣がん治療で用いられてきたタキサン系の抗癌剤やシスプラチンなどの白金製剤と併用するほうが効果が高いという結果が多く、またポスター発表では私のテーマと同様、シスプラチンの感受性を高める分子標的の探索を行っている研究者が非常に多かったです。
自分が行っている研究内容やその手法に全く新規性がないことに落ち込みましたが、今後の卵巣がん治療に関して、世界と自分が同じアプローチを試みていることに少し安心し、今後も現在の研究をさらに深めていきたいと感じました。
ポスター前に立っていなければならない時間が長かったので、私の隣でポスターを展示していたボストンに留学している親日家のカナダ人と世間話をし、今年3月に私が別の学会で行ったカナダのモントリオールがいかに素晴らしいか、カナダという国の自然の美しさや人々がいかに優しいかをひとしきり褒め、私もいつかカナダに住みたいくらいだ!と熱く語りましたら、「では留学したらいいじゃないか!」とそのカナダ人がBritish Columbia 大学の先生を呼びに行ってくれました。これはチャンス、連絡先を伝えなければと思いましたが、私の手元にはポケットに入っていたシワシワの紙しかなく、先方に失礼とは思いつつもその紙にメールアドレスを書き、握りしめて待ちました。British Columbia 大学の先生は私の研究内容にいくつかアドバイスをくれ、さらに「いくつか読んでおいたほうがいい論文があるけど、教えてあげるから…なんか書くもの…」と言って私が握りしめていた紙をとりあげ、論文名を書いてグッドラックと言い残し去っていきました。私の手元には、表に2つの論文名、裏に自分のメールアドレスが書いてある紙が残りました。
名刺を作っておくべきだった、と激しく後悔しました。その場で気に入られることはないにしても、名刺でも渡しておけばいつか思い出してくれるかもしれなかったのに。
「名刺を作ること」。これが今回の学会のTake-home messages となりました。
空いた時間には今年8月からシアトルに留学している重田先生にシアトル市内を案内していただきました。重田先生は慣れない環境に苦しんでおられ、私相手にやたら喋るという、日本ではあり得なかった姿を見せましたが、今頃は元気にやっていることと思います。また、私の指導教官である豊島先生のかつての上司のCarla Grandori 先生と夕食をご一緒させていただき楽しい時間を過ごしました。
非常に有意義な学会参加となりました。この機会を与えていただいた八重樫教授、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。