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海外学会報告
IFPA 2016 参加報告
濱田 裕貴
2016.9.12-18に国際胎盤学会(International Federation of Placenta Associations、以下IFPA)に参加いたしましたので、ご報告いたします。
IFPAは、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、日本の4つの胎盤学会を母体にした学会で、胎盤に関する臨床・基礎研究の発展を目的としていて、機関誌は「Placenta」です。
今年のIFPAは米国オレゴン州ポートランド市のOregon convention centerで開催されました。ポートランドはアメリカ西海岸に位置し、人口50万ほどの都市で、自転車とカフェが有名な近代都市です。日本からの直行便があり、以前は当教室の立花先生が留学で訪れ、また、現在では重田先生が留学しているシアトルの隣町とあり、当教室員にもなじみのある土地です。
学会に先立つ1日半のサテライトミーティングと、学会4日間の日程で開催され、計5日間すべてに参加させていただきました。
サテライトミーティングでは、地元のOregon Health & Science University(OHSU)の研究施設見学があり参加いたしました。2年前に設立された当施設は、電子顕微鏡を設置するため施設外からの振動を遮断する免震構造を基盤に建設されました。施設内には、高解像度蛍光顕微鏡から超大型電子顕微鏡まで最新の機器が揃っており、また、顕微鏡のメーカーの統一することで縦断的な解析が可能となり、様々な分野で研究が推進されており様でした。そのスケールの大きさに圧倒されました。
学会の参加人数は千人弱と小規模でしたが、その内容は密で、午前の一般演題、昼のシンポジウム、午後のポスター発表、夕方のワークショップと濃密な学会日程でした。演題は、胎盤関連といえども多岐にわたり、画像評価や疾患発症予測ツールといった臨床的な内容から、胎盤細胞株や遺伝情報の解析といった基礎的な内容があり、胎盤に関する様々な知識を得ることができました。特に細胞株と免疫が最近のトレンドで、中でも、線維芽細胞から胎盤幹細胞を誘導した研究(Kubaczka C et al.)や、妊娠中のZikaウイルス感染に関する研究(Mor G et al.)などが注目を集めていました。
ポスター発表は若手研究者を中心に約400の演題が登録されていました。発表形式は自由討論型ということもあって大いに盛り上がりました。若手同士の討論もさることながら、シンポジストを務めるような第一線の研究者との討論を交わす機会もあり、研究者同士の距離が近く感じられ、同じ研究分野で研究するもの同志の集まる学会ならではの光景を見ることができました。
私も、自身の博士論文である「Incomplete reprogramming of germline DNA methylation in the human placenta」をポスター発表して参りました。内容は、ヒト胎盤におけるゲノムインプリンティングとX染色体不活性化現象について、その発現とエピゲノムを網羅的に解析したもので、その内容につき評価をいただき、幸運にも「New Investigator Loke Awards」をいただくことができました。
日本からの参加者は、私を含め20人ほどで、2017年の日本産科婦人科学会を主催する広島大学、2016年の日本産婦人科学会を主催した東京医科大学、2018年のIFPAを主催する慈恵会医科大学、2016年の日本胎盤学会を主催する和歌山医科大学、日本医科大学、慶応大学薬学部、東京薬科大学から参加していました。学会期間中に、日本人交流会が開催され、私もご一緒させていただき、日本人の胎盤研究者の先生方と交流を深めることができました。
胎盤の研究は、NIHもプロジェクトを立ち上げるなど国際的に注目を集めている中、細胞培養の技術や遺伝子解析の技術の発展に伴い、様々なことが急速に解明されてきているのだと実感いたしました。私は今後とも、胎盤の研究に携わり、いまだ解明されていないPIHやFGRといった胎盤関連疾患の病態解明に力を注ぎ、周産期医学の発展に微力ながら貢献したいと考えております。
最後になりましたが、学会参加の機会を与えていただいた八重樫教授をはじめ、産婦人科教室の諸先生方に御礼を申し上げたいと思います。