HOME>海外学会報告

海外学会報告

NRG Oncology Semiannual meeting

橋本 千明

 

海外学会報告平成26年7月10日から13日まで、アメリカイリノイ州シカゴHyatt Regency Chicagoで開催された、NRG Oncology Semiannual meeting に参加させて頂きました。

アメリカの婦人科腫瘍に関連する臨床試験を計画、遂行している組織がGOG(the Gynecologic Oncology Group)ですが、GOGを含む3組織の頭文字からNRGと名付けられています。当教室からは、高野忠夫先生とともに二人で参加致しました。

 

 

 

まずMeeting初日には、“New Paradigms in the Pathogenesis of High-grade Serous Carcinoma: Translating Biological Advances into Prevention”というシンポジウムが行われました。STIC(Serous tubal intraepithelial carcinoma)やBRCAの話題が中心となっております。興味深かった話題を以下に記します。

  • “卵管原発”が現在のパラダイムである。
  • HGSCと比較して、STICではテロメアが短縮しており、中心体複製のレベルが低く、またALDH1A1の発現が減少している。
  • BRCA+の女性において、早期に発見された癌は大概serousであるが、症状のある状態で発見された癌は、よりendometrial-likeである。
  • (BRCA+の女性において)より進行したステージで気付かれた癌は、異なる発病の機序がありそうである。
  • STICとの関連は、BRCA-群において、より高いと思われる。
  • BRCA1, BRCA2, BRIP1, RAD51D, RAD51C, MSH2, MLH1,PMS2, MSH6が卵巣癌の原因遺伝子として判明している。
  • PALB2, BARD1も、卵巣癌の原因遺伝子である。
  • PPM1Dの(遺伝性ではない)モザイクもまた、卵巣癌のリスクを増加させる。
  • これらのmutationを持つケースの約1/3は、若年ではなく、また明らかな家族歴も有さない。

その他にも初めて知る知識も多く、非常に勉強になりました。
また、9日の夜にはJGOG Meetingが開催され、日本で行われているGOGの臨床試験について、discussionが行われました。

 

海外学会報告11日からは、小委員会に分かれ、実際の臨床試験に関する議論が行われました。子宮頚部委員会、子宮体部委員会、卵巣委員会にわかれ、それぞれの臓器に関連した臨床試験についての話し合いが行われましたが、その中で私が興味を持った臨床試験について、述べさせていただきたいと思います。

《 NRG/OVM 1403 》

  • Cediranib:
     ・経口チロシンキナーゼ阻害剤(VEGFR-1, -2, -3)
     ・再発卵巣癌におけるRR 17%であった。
     ・主な副作用:倦怠感、下痢、高血圧

  • Olaparib:
     ・経口PARP-inhibitor
     ・gBRCAm carriersにおいて、RR 41%(その中でプラチナ抵抗性においては、22%)
  • 主な副作用:倦怠感、骨髄抑制、嘔気

上記2種類の分子標的薬を使用した臨床試験ですが、非常に興味深い結果が報告されておりました。

⇒ Ced/Olap combination significantly improves PFS in woman with BRCA wt or unknown BRCA status

  • BRCA mutation carrierにおいて、Median-PFSは、Olaparib単独群では16.5カ月、 Ced/Olap群では、20.2カ月と延長する傾向にはあったが、有意差は認めなかった。(p=0.07)
  • BRCA mutation non-carrier / Unknownのグループでは、Olaparib単独群では5.7カ月、Ced/Olap群では カ月と、延長を認めた。
  • Olaparib単独群ではMedian-PFS 9.0カ月、Ced/Olap群では17.7カ月とPFSの延長を認めた。また、Olaparib単独群のORR 48%、Ced/Olap群ではORR 80%と、併用群にて奏効率の上昇を認めた。OSに関しては、現在検討中である。

 

⇒以上より、プラチナ感受性再発卵巣癌を対象にした、下記のphaseV trialにも今後注目していきたいと思います。
 @ Olaparib 300mg BID
 A Cediranib 30mg QD + Olaparib 200mg BID
 B Platinum-based chemotherapy (Carboplatin + Gem or PTX or PLD)

 

海外学会報告海外でのMeetingに初めて参加させていただき、大変貴重な経験をすることができました。ほぼ全日、なんらかの小委員会のMeetingに参加しましたが、少しの空き時間でミレニアムパークを観光することができ、シカゴの町に触れることができました。また、会場内に冷房がきいていて非常に寒く、真夏にホットチョコレートのおいしさにも感動しました。
そしてアメリカといえば肉!という私のイメージ通り、とってもおいしいステーキを2日連続でいただきました。(また、最終日は牛角シカゴ店に行きましたが、日本以上のおいしさでした!)食事の席でも、JGOGの先生方から貴重なお話を伺うことができ、またたくさんの先生とお知り合いになれたこと、本当に感謝しております。今後は英語をさらに勉強し、discussionにも積極的に参加することを目指して、臨床試験に携わっていきたいと思います。このような機会を与えて頂いた八重樫教授、高野先生、徳永先生をはじめ、教室の皆様、本当にありがとうございました。