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海外学会報告

第18回World Congress on Controversies in Obstetrics, Gynecology&Infertility(COGI)

西本 光男

 

海外学会報告平成25年10月24日から27日まで、オーストリアの首都ウィーンで開催された第18回World Congress on Controversies in Obstetrics, Gynecology&Infertility(COGI)に宇都宮先生と参加させて頂きましたこの学会は産婦人科全般、特に生殖分野、内分泌分野に力を入れている学会です。現在の日常臨床における様々な問題点の討論や創意工夫、そして基礎研究に関する話題も豊富にありました。学会場へのアクセスは非常に簡便で、ウィーン国際空港から電車で約20分にあるウィーンミッテ駅前のヒルトンホテルでした。
以下、印象に残った具体的な内容を御報告いたします。

① PEARL study

卵巣移植の第一人者であるベルギーのJ. Donnezらはこれまでに、経口ulipristal acetate(UA:選択的プロゲステロン受容体修飾薬SPRM)の子宮筋腫術前治療薬としての効果に関するプラセボ対照試験(PEARL I study)を報告している(New England Journal of Medicine、366:409-20.2012)。さらに、同薬とGnRH アナログ(leuprolide acetate)との比較試験も発表している(PEARL II study)(New England Journal of Medicine、366:421-32.2012)。結論としては、UA (5 mg/10 mg 連日投与)は子宮出血コントロールにおいてleuprolide acetate (月 1 回)に対して非劣性であり、ほてり頻度が有意に低く、leuprolide acetateの子宮筋腫への適応は長く承認されているが、今後はSPRMに置換される可能性があるというものであった。今回の学会では、未発表のPEARL III studyが初めて紹介された。UA (10mg)を5-Arm(0,12,24,36,48週)投与するプラセボを併用したBlind試験で、endpointは月経停止などの副作用である。これまでの経過では70-80%に月経再開が見られ、使用期間が長いほど回復時期が遅れるという結果でした。Donnezが「写真をとるな!」と繰り返しているにもかかわらず、皆が一斉に撮影し場内は笑いがこぼれておりました。

② 肥満と生殖医療について

加齢に伴う妊娠率の絶対的低下のみならず、肥満に伴う妊娠率の低下(ASRM,2008)、流産率の増加(Gesink Law et al. HR, 2007)、卵子内ミトコンドリア活動レベルの変化(Igosheva et al. PlosOne, 2010)等報告がありました。従来から言われているが、生活習慣病は生殖医療の妨げであることは間違いないため、初期不妊スクリーニング時からきちんと肥満のリスクを強調する事で、妊娠率の上昇や将来的な心血管系リスクの軽減に寄与できるものと報告されていました。

③ 卵子の質について

過排卵誘発を行いより良好胚を獲得するためには重要な因子はFSH、Antral Follicle counting、AMHであるという共通認識があるため、それらを参考にした誘発量の算定法について等報告されていました(Iager AE et al. Fertil Steril, 2013)。また、研究面では卵子の成熟過程においてmTOR経路が関わっている報告等がありました。また、卵丘顆粒膜細胞におけるup-regulateもしくはdown-regulateしているいくつかの遺伝子が発見され、着床率に差が出ているという興味深い報告がありました(Iager AE et al. Fertil Steril, 2013)。

④ PCOsについて

人種別のインスリン抵抗性やBMIとの関連性(Ewens et al. JCEM, 2010)、またPCOsのモデルマウスを用いた検討やその遺伝的背景における研究(van Houten et al. Endocrinology, 2012)、近年よく言われている事ではありますがPCOSであった症例が将来的に心血管系の生活習慣病罹患が明らかに多いこと(Hudecoba et al. Fertil Steril, 2011)に加え、癌発症リスクについても検討されていました(Juan et al. JCEM, 2013)。また、マイクロアレイ解析を行いmiR-93がPCOsでは過剰発現している(Chen et al. Diabetes, 2013)等様々な角度から検討が行われていました。治療薬としてメトフォルミンはまだクロミフェンに比べて普及はしていませんが、このような背景からメトフォルミン内服(インスリン抵抗性とPCOsの改善だけではなく将来的なDMや心血管系発症リスクの軽減)が推奨されていました。

⑤ PGSについて

日本では認められてはおりませんが、初期胚の段階で行うよりも胚盤胞の段階で行うとよりリスクが軽減、(検討手法の技術的進歩により)情報量も多く、正診率が非常に高い(将来的な妊娠率の増加、流産率の低下につながる)という報告がありました。侵襲性はあるものの、予後には影響しないと強調されている報告が多数出てきている一方で、PGSに対してはまだまだ否定的な意見もあり、今後の研究が期待されるところではあります。

⑥ 子宮筋腫、子宮腺筋症に対する治療としてピル、GnRHa、Dienogest等が本邦では主流となっていますが、レボノルゲストレル(LNG)5rないし10r投与が治療効果、また副作用の点からも優れていると報告されていました(Donnez et al. NEJM, 2012)。本邦での通常投与量よりもかなり高容量ですが、重大な副作用が起きていないと言う事から、将来的に新たな治療戦略の1つとなりえると思われます。

⑦ これは発表内容ではないのですが、ポスターは全てe-ポスター(電子媒体での発表)形でした。いつでも閲覧可能なことや貼り・外しの手間がいらず、さらにポスターを持っていく手間が省けて非常に楽かもしれません。ただし、演題数が多すぎる学会ではハードの準備に問題があるかもしれません。

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他にも産科領域では出生前診断、多胎妊娠、PIH、早産、胎盤異常など、婦人科領域においては乳癌と卵巣癌の遺伝的背景、HPVワクチン、内視鏡手術など様々な発表がなされていました。内容がとても豊富で目移りをしてしまいましたが、非常に実りある学会でした。
余談ではありますがウィーンは成田空港から直行便があり、治安が非常によく、歴史的建造物が街のいたる所にあります。かの有名な音楽家であるモーツアルト、ヨハンシュトラウス2世を輩出した音楽の国でもあり、演奏会やオペラ鑑賞が日常生活に浸透していたのには驚きで、そういう文化を味わう事が出来るという点で、おすすめです。
最後になりますが、平日日中にも関わらず国際学会に参加、勉強させていただくと言う多大な御高配を頂きました八重樫教授をはじめ、日常業務を分担して負担して頂いた教室内の先生方にこの場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。