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海外学会報告

ESGO学会報告

田中 創太

 平成25年10月19日から22日までの間、イギリスのリヴァプールで開催された第18回International meeting of the European society of gynaecological oncology (ESGO) に参加させて頂きました。
 リヴァプールは、アイリッシュ海に面した人口約45万人のイングランド北西部マージーサイド州の中心都市です。あのザ・ビートルズ誕生の地であり、サッカーではリヴァプールFC(ジェラード、オーウェンらを輩出)とエヴァートンFC(リネカー、ルーニーらを輩出)の本拠地です。その一方18-19世紀の海港都市としての姿を残しており、「海商都市リヴァプール」の名で、2004年にユネスコの世界遺産に登録されています。気候は暖流の北大西洋海流のおかげで高緯度であるものの温暖であるとのことでしたが、実際行ってみてみるとイギリスならではという感じで曇がちであり、気温は仙台と同じ位でした。

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  歴史について少し触れますと、リヴァプールは18世紀に植民地のある西アフリカと北アメリカをむすぶ三角貿易の拠点として中心的な役割を果たし、おもに奴隷貿易で急速に発展したという負の歴史があります。そしてこの三角貿易などによる資本蓄積でイギリスの産業革命が進展しました。19世紀にはアメリカとの貿易および客船業務でイギリス第一の港へと成長しました。(ちなみにタイタニックの船籍母港はリヴァプールであり、タイタニックを擁する船社「ホワイトスターライン社」発祥の地でもあります。タイタニックの多くの乗組員はここリバプール出身者だったようです。)最盛期は80万人近い人口を抱え、イギリス有数の工業都市・交易都市として栄えたリヴァプールでしたが、第二次世界大戦時にドイツ軍のはげしい爆撃にさらされ、1940年代後半、綿貿易と繊維産業は急速に衰退しました。さらに、1950年代以降イギリス全体の長期不況で急速に斜陽化し、次第にその地位は低下しました。現在は港湾部の各種施設やビートルズゆかりの建物などを利用した観光に力を入れているようです。
  今回の学会はマージー川に面したアルバート‐ドッグ(19世紀の船着場、倉庫を観光地化させた、横浜や小樽の倉庫街のような場所)の隣のArena and Convention Centre Liverpool で開催されました。参加者はやはり欧米人が中心でしたが、76か国もの国々から集まっており学会場に全国旗が掲げられていました。

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  演題は婦人科腫瘍疾患が中心で乳腺疾患も含まれていました。様々な国からの一般演題もさることながら、ヨーロッパの国々などのその国全体の臨床データであったり、複数の国で行っている大規模な臨床試験結果、最新の解析結果など、とても興味深かったです。当医局からは、伊藤潔先生にご同行して頂き二人での参加となりました。

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  私自身、今回は初の国際学会参加で、「子宮内膜癌の腫瘍組織中のアンドロゲン濃度」という題名でe-posterというこれまた初めての形式での発表でした。e-posterは学会期間中は終日、学会場にある6台くらいの大型テレビ大のスクリーンでタッチパネルにていつでも閲覧できるシステムでした。それぞれの演題にQRコードがあり、自由な取り込みが可能でした。
  様々な国の先生によるディスカッションの中で感じたのは、治療などでぶつかる問題点は共通していることが多い一方で、医療経済的な事や婦人科医療を取り巻く環境が国により異なることから治療方針の違いが出ることもある、ということでした。あたりまえに思っていることでも他国から見ればそうでなかったり、最新の知見はもちろん新たな視点を考えるといった意味で勉強になり有意義でした。
  個人的に興味深かったのは、Mayo clinicの外陰癌に対してのIMRTがG4以上の有害事象が無くなり従来の照射法より有用であったという発表、ICON7の中間解析結果、子宮体癌治療におけるロボット支援手術VS腹腔鏡下手術の治療成績の検討(3生率、合併症など)などです。
  学会の空き時間にはイギリス名物の2階建てバスに乗ってリヴァプール観光を行ったり、学会場のすぐ隣にあるビートルズ博物館に行ったりしました。学会初日の開会式にはリヴァプールならではのビートルズ(のコピーバンド)の演奏がありました。21日夜にはイギリスで一番大きく、世界で5番目に大きいthe Liverpool Cathedralへの大聖堂ツアーに伊藤先生と参加しました。大聖堂の中で厳かなパイプオルガンの演奏とおいしい食事だけかと思いきや、地元で有名?なバンドのライブ(最近流行りのRock & Pops中心で全くビートルズは演奏されず)がサプライズで行われ、大盛り上がりで厳粛なはずの大聖堂がクラブ状態となり異様な熱気に包まれました。さすがビートルズの誕生したリヴァプール!!という感じの粋な演出で、日本から来た他大学の先生方と共に楽しみました。

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 ESGOはヨーロッパで開催されますが、アジア、オセアニア、北米などからも多数参加しており、世界的な婦人科腫瘍医の集う学会になっています。それゆえ最新の知見や様々な国々のドクターの視点を学ぶことができ、臨床の現場で困った時に使えそうな事やこれからより良い治療を考える上で判断材料になるような事がたくさん転がっていました。
  日常の臨床をより良いものにするためにも、東北大学婦人科からの発信を兼ねてアンテナを高くする目的で、今回のような国際学会にこれからも参加していきたいと思いました。