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海外学会報告

第72回米国糖尿病学会学術集会に参加して

杉山 隆

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  2012年6月7日から12日に米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市において第72回米国糖尿病学会学術集会(Scientific Sessions of the American Diabetes Association; ADA)に参加する機会を頂きましたので報告します。本学会は、世界で一番会員数の多い学会で、今回は世界40か国から約1万8000人がフィラデルフィアに集まりました。

  私の参加目的は2つありました。第一は、わが国では既に施行されている2010年に改定された妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus; GDM)の新診断基準に関する世界の動向を知ることです。米国が中心にGDMの定義と新診断基準を提唱したものの、未だに採用しておらず、やっと動き出そうとしている状況です。それは新診断基準が観察研究に基づき決められており、GDMの頻度が2倍以上に増加するものの、治療介入の有効性とコストパフォーマンス関する疑問が解決さていないため、米国産科婦人科学会が決定していない経緯があります。世界各国も世界の動向をみながら自国への適用を徐々に行っています。今回、世界糖尿病妊娠学会(International Association Diabetes and Pregnancy Study Group; IADPSG)とADAが共同で新診断基準の採用へ向けてのシンポジウムが開かれるということで興味を持って参加しましたが、結果的には、結論に至るものではありませんでした。米国ではボストンのJoslin Diabetes Centerからの施設内検討の結果と今後の新診断基準導入の整合性についての報告がなされました。またブラジル、イタリア、オーストラリアにおける現況報告がなされました。これまで世界において別々の診断基準を用いていた経緯もあり、GDMの頻度があまり増加しない国や、2−3倍、わが国のように4倍に増加する国など存在し、医療介入に対する経済効果も大きな問題となることが如実となりました。わが国でも現在GDMに関する後方視的および前方視的多施設共同研究が行われていますので、今後日本発の研究成果を海外に発信したいと考えています。

  第二は、私の研究テーマである妊娠時の糖・脂質代謝に関して新しい情報を得ることでした。今回の学会で最も名誉ある学会賞を受賞したハーバード大学のSpiegelman先生の講演は素晴らしいものでした。インスリン抵抗性は、脂肪組織におけるアディポサイトカンの調節異常を基盤に軽度慢性炎症が関与することが知られています。たとえば肥満のインスリン抵抗性の機序として主として脂肪細胞が着目されてきましたが、彼らは褐色脂肪細胞に着眼し、エネルギー代謝に関与する褐色脂肪細胞の機能に関して分子生物学的技術を駆使して脂肪代謝に関わる新しい転写因子の同定やその機能を明らかにした経緯を示しました。

  今後、妊娠中に生じるインスリン抵抗性の機序や糖質異常・肥満に伴う脂質代謝異常に関し、マクロファージが浸潤した脂肪組織における炎症性変化に関する検討のみならず、妊娠中の褐色脂肪細胞の役割、妊娠中の腸内細菌叢の変化と免疫に及ぼす変化、妊娠中の臓器・神経間のネットワークの変化など、いろいろな切り口からの研究の方向性をみつけることができました。

 

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リバティ・ベル記念館

  フィラデルフィアは、米国が独立した際の記念すべき都市であり、“リバティ・ベル(平和の鐘)”として象徴される鐘が記念館に飾られています。開催場所であるコンベンションセンターから徒歩10分くらいのところに位置するとのことで、昼休みを利用して行ってみたものの、長い行列で1時間半以上かかるとのことで、記念館に入ることに断念しました。

ロッキー・ステップ(The Rocky Steps)は、フィラデルフィア美術館正面玄関階段の通称です。映画「ロッキー」およびその続編2, 3, 5の中で、命名の由来となった登場人物のロッキーが、あの有名なテーマ音楽に合わせてこの階段を駈け上がる場面があることから、この名がつけられました。映画「ロッキー3」の封切りにともない、階段の頂上にロッキーの銅像が置かれましたが、現在では階段下に移されています。現地ではロッキーの真似をして階段をのぼる観光客の姿が数多く見られるとのことでしたが、私が出向いたときは写真の如く、ロッキーは一人寂しく佇んでいました。

  米国留学時代(1995年から1998年)のラボの一部の仲間も集まり、現地ラボ同窓会が開催され、旧ラボメイトの研究内容や近況で話が盛り上がり、人のつながりのありがたさも改めて感じました。

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ロッキーの銅像 留学生OB会