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海外学会報告

第73回米国糖尿病学会に参加して

杉山 隆

2013年6月21日〜25日まで米国シカゴで開催された第73回米国糖尿病学会に参加しました。本学会は、米国を東部、中部、西部と分け、毎年持ち回りで順番に各地域で開催されます。具体的には、昨年は東海岸のフィラデルフィア、今年が中部シカゴ、そして来年は西海岸のサンフランシスコ、といった具合です。シカゴはニューヨーク、ロサンゼルスに次いで米国第3位の人口(280万人)の都市でダウンタウンの風景も結構迫力がありました。
写真の”Where are you from?”をみて頂ければわかりますように、中国、韓国からの参加者が多く、この数年間にアジアからの参加者の増加が顕著な変化です。

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ミシガン湖から眺めるシカゴのダウンタウン風景

妊娠のセッションは毎日開催され、シンポジウムが3セッション、妊娠関係の受賞講演が1つ、口演が1セッション、ポスターは40演題ありました。応募演題のうち4分の1が落とされる学会ではありますが、私はポスター発表することができました。内容は、妊娠糖尿病の管理に関する多施設共同研究です。妊娠糖尿病の診断基準は、2010年に変更されましたが、それに伴い、軽度耐糖能異常も妊娠糖尿病に含まれることになり、これら症例に対する管理については、現場の混乱を招いている状況があります。そこで、わが国における軽度妊娠糖尿病の管理に関する後方視的検討を30施設のデータを集めた検討結果を発表しました。対象は旧診断基準の1点のみ異常の妊娠糖尿病です。
その結果、1点のみ異常といった軽度妊娠糖尿病では、肥満症例に限れば、治療介入がHFDの発症低下と関連するというものです。

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ポスター会場

Norbert Freinkel賞は、妊娠と糖尿病の領域においてその理解や治療に関し論文や発表などで貢献した研究者に敬意を表するために寄与されるもので、本年度は、オーストラリアのCrowther CAが受賞し、講演がなされました。彼女は妊娠糖尿病の治療介入効果に関する世界初の大規模多施設共同研究(ACHOIS trial)を取りまとめましたが、妊娠糖尿病のみならず、早産や妊娠高血圧症候群に関するROCのtrialも先駆的に着手し、世界の周産期医療分野においても母児の健康改善に貢献し、事実、それらの研究成果は臨床へ応用され多くのガイドラインに用いられるに至った次第です。

私のもう一つの目的は、基礎研究の方向性をみつけることです。学会で最新の情報を得ることは、情報収集の漏れや研究の方向性やトピックスを知る上でとても意義深いことです。妊娠時のインスリン抵抗性に炎症と免疫の視点より研究を行ってきましたが、炎症と免疫のシグナルが臓器間でクロストークすることに関し、いろいろな分野で研究が進んでいます。たとえば、腸管の微生物叢の変化(microbiome)が免疫変化を介して母体の内分泌・代謝環境に影響を与えるという報告は新しい知見でした。

私の最後の参加目的は、International Association of Diabetes and Pregnancy Study Group (IADPSG)会議に出席することでした。3月に開催されたNIHによるGDMカンファレンス(NIH Consensus Development Conference on Diagnosing GDM)の結果が主たる課題でした。IADPSGが2010年にGDMの定義と新しい診断基準を提唱しましたが、3月に開催された上記カンファレンスにより米国では時期尚早とのことで認められませんでした。IADPSGの主要メンバーが属する米国でさえ認められなかったのは、驚きでした。NIH側の理由としては大きく2つあります。1つは新診断基準によりGDMが増加しますが、1点のみ異常のような軽度GDMのRCTがないことです。次に費用の問題です。増加するGDMに対して、膨大な診断検査がなされることになりますが、妊婦への精神的、肉体的、経済的負担のみならず医療者の負担、保険の体制、さらにコストエフェクティブネス(新診断基準導入により莫大な費用が掛かることになりますが、加えて診断されたGDMに対する診断、管理がどれだけ母体、児、母体・児の将来ノアウトカムを改善することにより、当初の費用をどれだけカバーすることができるかに関する経済的根拠)に関するエビデンスがない状況で新診断基準を導入することは不可能とするものです。

今回の会議では、NIHの判断に対してIADPSGがどのようにリスポンスをすべきか、あるいはどのような対応を図るか、などが話されましたが、結論に至らず、秋に開催される欧州糖尿病学会分科会で再検討することになりました。

若い先生方には、ぜひとも国際学会で発表する機会を持って頂きたいと思います。私なりの具体的な参加法をざっくりと紹介したいと思います。国際学会では、まずシンポジウムを中心に参加することが重要です。シンポジウムは、学会の中でも各分野の専門家がそれぞれのトピックスに関する質の高い最新の情報を持った演者を集めてプログラムが組まれますので、世界の流れを知ることができます。未発表の最新情報も発表されますが、既報の場合、それら文献をメモすることも大切です。夕食は食事とアルコールを楽しみ、酔いに任せ一気に眠り、時差で夜中の3時ごろに覚醒しますので、そこでpubmedからチエックした論文をピックアップし、自分の知識を整理すれば、ステップアップできます。明け方に眠くなるので少し寝て朝のセッションに参加します。出だしは好調ですが、昼前くらいから午後のセッションは最悪です。日本の夜中ですから、強烈な睡魔に襲われます。これは仕方ないので意識消失発作を繰り返しながら頑張ります。ポスターセッションでは、自分の得意な分野のセッションに参加し、積極的に質疑することが有効です。
そして、最後の仕事として復路の機内で学会参加報告をまとめましょう。