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海外学会報告

Marsha Rivkin’s Ovarian cancer meeting 学会報告

豊島将文

海外学会報告平成24年9月6-7日に米国シアトル市で行われたMarsha Rivkin Center for Ovarian Cancer Researchのsymposiumに参加したので御報告致します。この学会は隔年シアトルで行われており、今年は口演42題、ポスター18題でした。規模は小さいものの財団が卵巣がん研究に多額の研究資金を配分しているため、多くのレベルの高い研究者が集まるコアな学会です。セッションごとに簡単に内容をご紹介します。

1: Origins of ovarian cancer

卵管の話が出るのかと思いきや、「漿液性卵巣がんの発生母地が卵管采の可能性がある」というのは既に共通認識となっており、その上で初期病変のバイオマーカーとして使える分子を探索している内容でした。卵巣がんで変異が見られる遺伝子群をセットとしてシークエンサーで調べるBROCA protocolでRAD51の遺伝子変異が6%の患者で診られたというワシントン大学のElizabeth Swisher博士の発表は興味深かったです。また複数の演題がDicerやmiRNAを調べていましたが、特にDicerの遺伝子変異や発現低下は卵巣がん、特に胚細胞腫瘍で重要との事です。


2: Frontiers of translational medicine in ovarian cancer

私の発表は「c-Mycの過剰発現がAurora A阻害と合成致死を示す」という内容でしたので、このセッションで卵巣がんとAurora A関連が2題あり非常に興味深かったです。特にAurora AがDNA損傷反応でも重要な枠割をしている事や、Aurora A阻害剤がBRCAnessと合成致死作用を示すという演題はとても参考になりました。

 

3: Clinical Research advancement in ovarian cancer

化学療法を中心にした演題のセッション、細かいスライドで早口で話す演者が多く(MDに特徴的?)内容の理解が困難でした。内容としては血管阻害剤の話が複数と、ネオアジュバンド化学療法、タキソール誘導体のIP療法のphase I studyと多彩な内容でした。

 

4: Novel therapeutics in ovarian cancer

主に免疫療法の話が多く出ていました。米国の有力な研究所は卵巣がんの免疫療法に精力的に取り組んでおり、この学会でも毎回多くの発表があります。しかも有力なラボが多いので実験データは圧倒的ですが、まだ臨床応用へ向けて着実に進んでいるという印象は持てませんでした。私の演題はこのセッションの一番最後でした。

 

Special session: PARP inhibitors

二人のパネラーが出てきて、PARP阻害剤についてひたすら話し続けていました。話の焦点がわかりにくかったのですが、オラパリブが米国で広く使われている事やBRCA変異と合成致死作用を示すことを強調していました。しかしBRCA変異だけではなく、エピジェネティックな作用によるBRCAnessや他の一本鎖DNA修復機構に関わる分子の変異でも同様にPARP阻害が強い細胞毒性を示すので、適応範囲は広いと感じました。

 

シアトルに着いた初日は運よくマリナーズ対レッドソックスというプラチナカードが手に入りました。マリナーズのTシャツを着て行ったものの、ジャケットを脱ぐには気温が低くて残念でした。しかし試合は投手戦となり2-1でマリナーズが勝ったので気分よく帰れました。

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また一年半前まで仕事をしていたFred Hutchinson Cancer Research Centerを訪れ、多くの以前の仲間に会えたのは非常にうれしい出来事でした。Denise Galloway先生がシアトルでのHPV meetingのプロモーションビデオを作っており、急遽日本語でシアトルを紹介する事になりました。このビデオは近日中に公開されますが、日本からの参加者が少ないとDeniseに怒られそうです・・・・。

 

この学会は卵巣がんの患者やその家族が多く参加しているのも特徴的です。ナッシュビルから参加した患者家族の方と話す機会があったのですが、彼女の母親が11年前にIII期の漿液性卵巣がんと診断され、今までにTC療法、アバスチン、オラパリブ、ドキシルなどの治療を受けていましたが再発病変があるそうです。母親のために多くの論文を読み、臨床試験を調べ、学会に参加して専門家にコンタクトを取るという行動力に強く心を動かされました。この様な患者やその家族が医療を動かす大きな力になっていると思います。