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海外学会報告

第102回アメリカ癌学会(AACR)学術集会参加報告

黄 志芳
海外学会報告
学会会場:Orange County Convention Center

大学院生になって以来ずっと吉永先生と一緒に参加したいと思っていたAACRの学会ですが、今年の3月11日に発生した未曾有の東日本大地震により学会参加に少し躊躇していました。しかし、マレーシアに一時避難帰国する直前に吉永先生が「AACRに行って勉強してきな」と背中を押してくれました。医学部を卒業してから臨床研修を行わずに大学院に入った私は震災の時何も役に立てず、特に無力感を感じていましたが、吉永先生の優しい言葉に感謝の気持ちでいっぱいでした。結局吉永先生はアメリカには行けず、私は平成23年4月1日成田空港から一人でアメリカ・フロリダ州へ飛びました。

今年のAACR (American Association for Cancer Research) Annual Meetingはディズニーワールドをはじめ遊園地がたくさんあるオーランド市で開催されるため、乗り換え地のシカゴからの飛行機内には小さいお子さん連れの家族が大勢いました。オーランド国際空港に到着するとアメリカの入国審査が厳しく、少し面接を受けました。「What is your purpose here?」定番の質問をされ、「I am here for a conference.」と簡単に返したら、「Mickey mouse conference?」と少し揶揄されました。AACRの学会について少し説明し、無事に入国することができました。

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ポスターの前の私
フロリダ州オーランド市に到着したのは4月1日の夕方でした。学会は4月2日から6日までなので、2階建てのモーテルのようなホテルに5泊しました。AACRは基礎研究を中心とする癌学会なので、臨床に携わる医者よりもPhDを持つBasic scientistの参加者の方が多かったようです。初日の4月2日は授賞式、有名人の講演が大半を占めました。ミニシンポジウム、ポスターなどの発表会が2日目から順次開催されました。

今年の学会の目玉は何と言ってもThe Cancer Genome Atlas (TCGA)の成果発表でした。三日間もかけて、様々な形で講演会、ワークショップなどを通じて発表がありました。TCGAは20以上の癌種に対して総合的に遺伝子解析を行う大規模プロジェクトで、現段階では卵巣漿液性癌および神経膠芽腫についてのプロジェクトの完成度が最も高かったと発表されていました。その遺伝子解析のデータは世界中の研究者と共有する目的で収集したものなので、誰でも何らかの組織に雇われる学者であると証明できれば、該当のウェブサイトでPI(Principal Investigator:主任研究者)として登録できます。そして、PIとして登録を済ませば、TCGAのデータを使って自由に研究・解析ができるようになると言われました。

私は今回、講演会以外、様々な大学教授と触れあえるランチやディナー形式のワークショップにも積極的に参加しました。食事付きのワークショップはRoundtable Discussionとなっており、アメリカの教授のみならず、研究者、大学院生などと直接に交流できたのは最大のメリットでした。 また、テーブル毎にテーマが異なるため、興味のあるテーマを選べばそれぞれのテーブルに行って積極的にDiscussionに参加でき、話題が尽きる心配もほとんどありませんでした。 これらのワークショップの参加費はAACRのメンバーは無料でしたが、メンバーではない場合、セッション毎50ドルがかかると登録時に教えていただきました。幸いにも私は2009年から大学院生等向けのAssociate Memberになっていましたので、今回も無料で参加させていただくことができました。 このようなワークショップの4セッションに参加しましたので、200ドルの節約ができて嬉しかったです。

今回は震災の中、AACRという立派な学会に参加させていただけたことに日本への感謝、日本に残る皆に対する無力感からの申し訳ない気持ちなど、複雑な思いでいっぱいでした。一方、日本の事に関心、同情を持っていただいた外国人とも触れあえ、日本にいながらも会えなかった日本人の研究者とも交流ができ、参加する意義を非常に感じました。将来、是非この経験を何らかの形で活かせればと思っております。医局の皆様は機会があれば、是非AACRの学会に参加していただきたいと思います。