HOME>海外学会報告

海外学会報告

サンフランシスコ学会参加報告

豊島 将文

平成23年11月12日-16日の日程で開催された、AACR-NCI-EORTCのジョイント学会であるMolecular Targets and Cancer Therapeutics「分子標的とがん治療薬」に参加してきました。場所は米国サンフランシスコのモスコーンセンターでした。

海外学会報告 海外学会報告 海外学会報告

 

海外学会報告発表は大ホールでのSessionが52題、中ホールでのconcurrent sessionが計32題、ポスターが737題という規模のものでした。今学会で非常に驚いたことは、がん治療研究ではもはや製薬会社がメインプレイヤーである、という事です。それは単に参加者や発表数が多いというだけでなく、keynote lectureや座長の半数近く(以上かも?) を製薬会社の研究者が務めている事からもわかります。COI開示でも多くの演者がCOIを持っており、ある発表者が冗談で「残念ながら、私には開示すべきCOIはない」と言っていたのが印象的でした。

私の発表は3日目のポスターセッションで、他にも日本から多くの参加者がありました。以下に特に興味深かった発表を4つご紹介します。


1.Preventing multiple types of cancer thorough HPV vaccination.

日本でもHPVワクチンが本格的に始まっていますが、GSKもMerckも高リスクタイプとしては16型と18型しか標的にしておらず、理論的には子宮頸がんの60-70%しか予防できないことになります。(ただしCINをendpointとして効果を確認しているので、他の型に関しても多少のcross reactionはあると思いますが)。これらのワクチンはHPV型別のL1のエピトープを抗原としていますが、HPVに共通するL2抗原を標的にした次世代HPVワクチンの開発が進んでいるという内容でした。HPVウイルスが微小な傷から基底細胞に感染する際にconformation changeをするのですが、その時にL2が表面に出るので標的とできるそうです。有効なL2ワクチンができれば、間違いなく今のワクチンにとって代わり、また男児も接種対象になるでしょう。

 

2. Genomic profiling for personalized medicine

本学会でベストの演題でした。がんの分子標的治療を研究するに当たり、腫瘍の不均一性をどう考えたらいいかを常に悩んできましたが、このtalkを聞いてヒントを得た気がしました。腎明細胞がんではvHLの遺伝子変異が約60%に生じ、他にSETD2などの変異が見つかります。同一患者の腎がん原発部位から6か所、転移巣から2か所の腫瘍を採取して、それぞれの遺伝子異常をシークエンスしたところ、検出される遺伝子変異から下図のような樹形図が書けたそうです。

海外学会報告これを見ると、どの遺伝子変化がdriverで、どの部位が転移巣の原発となっているか一目瞭然です。面白いことに、同じ機能喪失変異でもdeletionとpoint mutationでは異なる枝になるそうです。

同じことを化学療法後の再発腫瘍でできたら、化学療法の治療効果を知るうえで非常に有用な情報が得られると思いました。


 

3. Building more predictive in vitro and in vivo models to identify responder populations preclinically.

卵巣がんでも高頻度で見つかるPIK3CA mutantを標的にした阻害薬BYL719の話でした。Pancreatic cancerへの使用を念頭に、どの様な患者がBYL719投与のメリットを得るかについてin vitroとin vivo両面で予測するモデルを樹立しようとする研究で、次世代シークエンサーを利用したバーコード付きshRNAによる細胞ベースのスクリーニングから多数の細胞株での網羅的評価、マウスモデルを用いた治療に至るまで、Novartisの総力を挙げて研究している様子がよく分かりました。質・量とも圧倒的な内容の研究成果であり、アカデミア発創薬のあり方を考えさせられる発表でした。

 

4. Concurrent Session7: Challenges in genomic Based Characterization of Tumors

がんゲノムの超巨大データベースであるICGC, TCGA、またマイクロアレイデータベースであるoncomineなどの実際の運営者からの発表でした。現在の世界の趨勢として、今までバラバラに産生されてきたがんゲノム情報を、共通財産として皆が使える形で統合しようという動きが盛んです。実際にTCGAのデータを統計処理してカプランマイヤー曲線を書いてfigureとしている論文も多数見られます。この様な流れのなかで、自分たちでデータベースを構築するのであれば、何を目的にしてどの規模で作り、かつ既存の巨大データベースをどう協力していくかを熟慮しなくてはいけないと感じました。

 

天気に恵まれ、空き時間にチャイナタウンを見たり、ケーブルカーにのってフィッシャーマンズ・ワーフに出かけてアルカトラズ島を見る事が出来ました。また最終日はかつての同僚と一緒に夕食を食べて楽しい時を過ごせました。次回のこの学会はアイルランドのダブリンで行われます。

海外学会報告 海外学会報告 海外学会報告