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婦人科腫瘍診療

人に優しく、徹底的にがんを征圧

当院婦人科腫瘍グループでは、年間200症例以上の婦人科悪性腫瘍に対して世界標準治療を導入した治療実績に加え、患者様の機能温存を重視しかつ十分な制癌効果を有する治療の展開に全力で取り組んでいます。2009年の手術件数は486件、新規がん症例(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、外陰がんなど)は260例でした。

患者様のQOLに視点をおくことで、これまでにない新しい婦人科腫瘍の取り組みを展開しています。

婦人科癌 ―子宮頚癌・子宮体癌・外陰癌― センチネルリンパ節生検に基づく治療

 がんが始まった場所(原発巣)から、身体の他の部分にがん細胞が拡がることを転移といいます。転移は大きく分けて、がん細胞が原発巣から直接周囲に浸潤していく方法と血液、リンパ液にのって遠くの臓器に転移していく方法、があります。その中でリンパ管の中をリンパ液にのって流れ出たがん細胞が、リンパ節の網にひっかかり、そこで増殖をしてしまった状態をリンパ節転移といいます。

子宮頚癌-膀胱機能温存術式の展開

 子宮頸癌の治療の一つに広汎子宮全摘術があります。この手術は所属リンパ節を郭清(摘出)し、子宮を支えている前、中、後の各子宮支帯を含め、広く子宮を摘出する術式です。この術式では膀胱の収縮を司る神経(骨盤神経膀胱枝、以下膀胱神経)が傷つき、術後に排尿障害がでる可能性があります。当教室では膀胱神経を温存する神経温存術式を取り入れていますが、現時点では膀胱神経が残せたかどうかを確実に評価するシステムはなく、神経温存ができたかどうかが明らかにできません。そこでわれわれは膀胱神経を電気刺激し、その結果として起こる膀胱の収縮圧力をみることによって神経温存を判定するシステムを開発しました。このシステムの有用性を検討するために、「神経診断装置による骨盤臓器機能の診断に関する研究」をおこなっています。

子宮頸癌-妊孕能を温存した子宮頸部切除術

 子宮頸癌は、ごく早期のものであれば、円錐切除術(子宮頸部の病巣のみを円錐状に切除する手術)によって病巣のみを切り取り妊娠・出産は可能です。しかし進行期が1A期以上になった場合、子宮を摘出せざるを得ず、自分自身で妊娠・出産することはあきらめなければならないのが現状です。しかし、当教室では病巣の子宮頸部を広く摘出し、かつ将来赤ちゃんのベッドになる子宮体部は温存する「広汎性子宮頸部摘出術」に取り組んでいます。

臨床試験について

 婦人科悪性腫瘍に対する新しい薬や治療法は、それらが安全かつ有効であることが確認され、初めて標準的な治療として確立したものとなります。多くの患者さんのご協力を得て、新しい治療法の安全性と有効性を科学的に調べるための研究の方法が「臨床試験」です。
臨床試験には、大きく分けて「治験」と「医師主導臨床試験」があります。

 「治験」とは、厚生労働省による新薬としての承認を得ることを目的とし、これまで患者さんに使われたことのない新しい薬、あるいはこれまでその病気では使われたことのない薬の安全性や有効性を調べる臨床試験です。臨床試験の結果により厚生労働省による承認が得られると認められた病気の範囲内で使えるようになるのです。

 一方、「医師主導臨床試験」は、これまで厚生労働省で承認された薬、治療法を用いて、その中から最良の治療法を確立することを目的としています。

 臨床試験は登録していただいた患者さん、あるいは将来の患者さんに対して、より良い治療を提供することを目的としています。皆様のご協力をお願い致します。

現在進行中の臨床試験例
  • 進行・再発子宮頸癌に対する化学療法について
  • 子宮体癌に対する最適な術式について
  • 卵巣がんに対する妊孕性温存手術について
  • 早期卵巣癌に対する化学療法について
  • 外陰がんに対する放射線化学療法について