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当科における内視鏡手術

急速な医療技術の進歩により、内視鏡は様々な疾患の診断や検査に対してその適応が広がってきました。開腹手術では、腹部を大きく切開するため、身体への負担は大きくなります。内視鏡下手術では、傷が小さい目立たないなどの美容的な面だけではなく、拡大視野による観察やより繊細な手技が可能になるだけではなく、術後の痛みが少なく回復も早いことから、早期の退院および社会復帰が可能になります。また、癒着もできにくいとも言われ、不妊症などの温存手術症例に適していたり、腸閉塞などの遅発性術後合併症の防止に繋がります。一方、内視鏡手術を安全に行うためには、高い技術、確かな知識と専用の器具を要します。

当科では、腹腔内から子宮や附属器(卵巣、卵管)に対して行う腹腔鏡下手術、経腟的に子宮内宮病変(子宮筋腫や内膜ポリープなど)に対して行う子宮鏡下手術、そして卵管不妊(角部閉塞、近位部閉塞)に対して卵管鏡下手術を行っています。

 

腹腔鏡下手術

通常、腹部3〜4ヶ所に腹腔鏡用のポート(内径5〜12mm)を挿入し専用のカメラと鉗子などを使用して手術を行います。症例によって創部の大きさや数、場所は異なります。

 

子宮鏡下手術

経腟的に子宮内に硬性鏡(レゼクトスコープ)を挿入し、子宮内を環流液で充満させて手術を行います。ルーブ型デバイスを使用して、子宮内腔に隆起もしくは突出した病変に対して切開や剥離などを行い摘出します。膣から操作となり腹部に傷は残りませんが、狭い経路からの手術操作になるため全ての症例が対象となるわけではありません。

 

対象疾患

1.不妊症、不育症

・診断的腹腔鏡検査

不妊スクリーニングにて、子宮卵管造影検査に異常所見がある場合や軽微な腹腔内病変を疑う場合には、腹腔鏡を使用して、子宮、卵管、卵巣とその周辺を十分に観察します。
状況により以下の手技を行います。

  • 卵管通色素試験
    (子宮内に青色色素を注入し卵管の疎通性を評価します)
  • 大量通水
    (子宮内に100〜300mlの生理食塩水を注入し、卵管内を洗浄します)
  • 癒着剥離術(卵管や卵巣周囲の癒着を剥離したり、子宮後方(ダグラス窩)を開放したりします)
  • 子宮内膜症病変焼灼(子宮内膜症の表在病変を焼灼、蒸散します)
  • 卵巣多孔術(多嚢胞性卵巣症候群、排卵障害に対して、卵巣の表面に20個ほどの穴を開けます)

・子宮鏡下子宮内膜ポリープ・粘膜下筋腫摘出術

不妊症や月経異常の原因となっている子宮内腔病変(内膜ポリープや粘膜下筋腫など)を子宮鏡下に摘出します。

・卵管鏡下卵管形成術

卵管近位部(角部、間質部、峡部)の閉塞による卵管不妊症に対して、極細の卵管鏡を用いて卵管の通過性を回復させます。当科では腹腔鏡を併用します。

 

2.卵巣腫瘍

良性卵巣腫瘍に対しては、原則腹腔鏡下手術を行います。腫瘍の性状(大きさ、癒着、嚢胞性か充実性か、片側か両側かなど)から小切開を加えることもあります。なお、当科では、術前より悪性および境界悪性を疑う場合には、原則腹腔鏡下手術は行っておりません。

・腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術

卵巣の正常部分は残し、卵巣内に発生した腫瘍部分のみを摘出します。
卵巣機能、妊孕能を温存する方に行います。

・腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術

卵巣の正常部分は残し、卵巣内に発生した腫瘍部分のみを摘出します。卵巣機能、妊孕能を温存する方に行います。

 

3.子宮筋腫

子宮筋腫に対する手術療法は、根治手術である子宮全摘術と、子宮を温存する子宮筋腫核出(摘出)術があります。サイズや位置を考慮して、可能な限り内視鏡下手術を選択します。年齢や妊娠希望、症状などから術式を検討します。

・腹腔鏡下子宮全摘術

腹腔鏡を使用して、連絡する血管、靭帯などを切離して子宮を摘出します。

・腹腔鏡下子宮筋腫核出術、腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術

腹腔鏡を使用して、正常筋層を切開し筋腫核のみを摘出します。切開した筋層は縫合して修復します。

 

・子宮鏡下粘膜下筋腫核出術

子宮鏡を使用して、子宮の内腔に突出している筋腫を摘出します。

 

 

 

4.子宮内膜症、子宮腺筋症

腹腔鏡を用いて、疼痛や不妊症の原因と考えられる子宮内膜症病変を摘出、焼灼したり、癒着を剥離したりして、症状の改善を図ります。手術療法には温存手術(卵巣のう胞摘出や病変焼灼、ダグラス窩開放など)と根治術(子宮全摘、付属器切除など)がありますが、妊娠希望、症状、病変の状況などから術式を検討します。

 

5.異所性妊娠(子宮外妊娠)

子宮体部内膜に着床する正常妊娠に対して、子宮内腔以外に着床してしまうことを異所性妊娠(子宮外妊娠)といいます。そのほとんどが卵管妊娠(90%以上)です。その他希少部位妊娠として、子宮間質部(1〜2%)、卵巣(1〜2%)、子宮筋層内(<1%)、腹膜(<1%)、頸管(<1%)、帝王切開瘢痕部(<1%)などがあります。
卵管妊娠に対する治療は手術療法が一般的で、原則腹腔鏡で行います。

・腹腔鏡下卵管切除術

着床している患側卵管を摘出します。

・腹腔鏡下卵管線状切開術

患側卵管を線状に切開し、卵管内の妊娠組織のみを剥離、摘出します。時に薬物療法(メソトレキセート)を併用します。頸管妊娠、帝王切開瘢痕部妊娠に対しては、時に子宮鏡を用いて妊娠組織を提出する子宮温存手術を行うこともあります。

 

6.性器奇形

子宮奇形、腟奇形などの性器奇形に対して、腹腔鏡手術を行うことがあります。
詳細については内分泌外来ページをご参照ください。

 

7.子宮悪性腫瘍

当科では子宮悪性腫瘍に対して腹腔鏡による手術治療を行っています。詳しくは腫瘍外来のページをご参照ください。

 

治療成績

工事中です

 

治療費用

入院日数と手術料、麻酔料を含む入院費用の目安は以下の通りです。
入院費用は、限度額適応前の3割での概算金額で、入院期間や術式の追加変更などにより異なります。
なお、個室料金、病衣代、診断書代は含まれません。

 

手術名 入院日数 費用
診断的腹腔鏡 5日入院 約7万円
腹腔鏡下癒着剥離術 5日入院 約17万円
腹腔鏡下多嚢胞性卵巣焼灼術 5日入院 約19万円
腹腔鏡下子宮内膜病変除去術 5日入院 約17万円
腹腔鏡下子宮全摘術 7日入院 約26万円
腹腔鏡下子宮筋腫核出術 7日入院 約25万円
腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術 5日入院 約21万円
腹腔鏡下異所性妊娠手術 5日入院 約18万円
腹腔鏡下造腟術 7〜14日入院 約27万円
卵管鏡下卵管形成術 5日入院 約25万円
子宮鏡下筋腫摘出術 3〜5日入院 約16万円
子宮鏡下ポリープ切除術 3日入院 約10万円
腹式子宮全摘術 10日入院 約25万円
腹式子宮筋腫核出術 10日入院 約24万円
腹式卵巣腫瘍摘出術 10日入院 約21万円