周産期研究
妊娠ヒツジを用いた胎児生理学研究
東北大学産科グループでは20年以上前から子宮の中の赤ちゃんがどのように成長し、どんなふうに子宮の中の環境に適応していくのか、あるいはお母さんに投与した薬がどのように赤ちゃんに影響を及ぼすのかなどを妊娠している羊を用いて研究を行ってきました。これらの研究成果は日本国内にとどまらず海外においても広く臨床現場に還元され、多くの小さな命を救ってきました。この東北大学産科の歴史を受け継ぎ、現在も妊娠している羊を用いて様々な胎児生理学研究を行っています。
我々産科医にとって早産の主たる原因となる子宮内炎症は、現在でも大きな課題と言わざるを得ません。その子宮内炎症をいかに正確に診断し、いかに沈静化するのか、あるいは沈静化できないのならどのタイミングで赤ちゃんを分娩にすれば上手に救うことができるのか、そういった臨床現場にフィードバックできる成果を求めて研究をしています。この研究は産科医の努力のみでは結実することは難しく我々は赤ちゃん専門の医師:新生児科医と共同でこの胎児生理学研究を行っています。この垣根を超えた良好な研究環境を最大限に活用し、現在では人工子宮&人工胎盤といった「人類には不可能」とまで言われた研究を遂行し、世界に向けてその成果を発信しています。
我々は研究のための研究をしているわけではありません。臨床現場にフィードバックできる成果を求めて研究を行っています。その実行のためにはどうしても世界に視点を向けた活動も必要と感じています。そこで、西オーストラリア大学で行われる国際的な妊娠羊を用いた胎児生理学研究に2009年から参加し世界の高名な研究者や新生児科医、産科医と共同でこの人工子宮&人工胎盤研究のさらなる飛躍を求めて活動しています。現在では、東北大学の羊研究グループから西オーストラリア大学に留学者を輩出し、定期的に人材交流も行っています。
みなさんのご想像の通り、妊娠を取り巻くミステリーはまだまだ多く、謎だらけです。しかしながら、その謎を謎のままにせずに世界中の小さな命を救うために一つでも謎を解き明かし、新しい診断、新しい治療を生み出していきたいと思っています。
当教室の齋藤昌利先生・熊谷祐作先生らが共同研究している西オーストラリア大学から臼田治夫先生(当大学小児科)、Matthew W. Kemp先生が第71回日本産科婦人科学会学術講演会で発表し、それぞれJSOG Congress Award, JSOG Congress Encouragement Awardを受賞しました。
発表タイトル
臼田先生:First achievement of successful maintenance in 95 days extremely preterm lambs treated with Ex Vivo Uterine Environment (EVE) Therapy
Kemp先生:The efficacy of low-dose antenatal steroid therapy is dependent on the treatment to delivery interval
なお、臼田先生の発表内容は論文としてAJOGに掲載され、Research Newsに取り上げられました(こちら)
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